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(写真提供:村上裕一)
ネガティブな感情から距離をとる「修復力」を身に付けるためには、自分自身を1歩引いた視点から眺める「客観視」が必要不可欠。そして客観的な視点は、勝負事で強さを発揮するうえでも大事なものです。
格闘技に限らず、勝負や競争には必ず相手がいます。「客観視」ができないと、自分の強みの過信や、逆に弱点の軽視などによって、必ず足をすくわれてしまいます。
 

「客観視」ができなければ、勝負に勝ちきれない

僕が「客観視」を意識するようになったのは小学生のころです。あるとき両親がビデオカメラを買ってきて、僕の動きを撮影してくれました。そして、そこに映っていた自分の動きを観て衝撃を受けます。想像していた自分の動きと、画面に映る等身大の自分の動きが、まったく一致していなかったんです。
自分でうまくできているつもりでも、実際にはできていないことがたくさんある。そのことに気づいた僕は、ビデオで自分を撮影することにハマり、あらゆる動作を自分で検証するようになりました。そして、思い込みと現実のギャップを埋めることで、自分の弱みを潰し、新たな強みを身に付けることができるようになりました。この徹底した「客観視」の訓練が、後の格闘技生活に大きく役立ちます。
逆に言えば「弱い」人というのは、自分のしたい動きだけをしてしまう人、自分のイメージどおりに物事が進むと思い込んでいる人のことだと言えるでしょう。
そういう人は、実戦の場で自分の思うように事が運ばないときに、なぜうまくいかないのかを理解できません。自分の予想と異なる動きをする相手が現れたときに、翻弄されるままになってしまうのです。
「客観視」の実践の仕方としては、第三者に意見を求めたり、他人のよい部分を観察することが有効でしょう。
RIZINでリオン武選手と対戦したときのことです。僕は動体視力に自信があるので、相手の攻撃をもろに受けることはあまりありません。しかし彼のパンチは特殊な打ち方で、うまく避けきれませんでした。「これはすごい技だ」と感じ、すぐに研究を開始。次の試合のときには、技のレパートリーに加わっていました。自分にないものに出会ったら、とにかくすぐに試してみる。その積み重ねで、視野も広がっていきます。
また、視点をずらす客観視の考え方は、戦う相手を分析するときにも応用できます。通常の客観視は、「自分の主観から離れて、第三者の視点からビデオカメラのように自分を眺める」ことです。他人を分析するときにはその反対に、「第三者の視点から見た風景を、自分の主観に置き換えて再現する」操作をします。僕はこれを、「空間的想像」と呼んでいます。
格闘技の試合を例に挙げましょう。例えば、試合相手の分析をするために、その相手の過去の試合映像を可能な限りたくさん観ます。映像には、2人の選手が並んで戦うところが映っていますが、実際の試合では、自分の視界に映るのは相手だけです。このギャップを埋めるためには、撮影された映像を観るときに「自分の視点からだとどう見えるか」をシミュレーションする必要があるのです。


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