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拡大解釈で多く敷金を取られる可能性も!

──なるほど! この原状回復義務の範囲さえ把握しておけばもう敷金トラブルに悩まされることなさそうです。
菊地:安心するのはまだ早いですよ。気をつけなければいけないのは原状回復義務範囲のボーダーラインです。例えば、ポスターやカレンダーの画鋲跡は借り主の負担になりませんが、コート掛けを設置するために壁にネジなどで穴を開ければ「画鋲跡」とはいえず、「通常使用を超える」と判断される可能性もあります。
──たしかに、画鋲跡とネジで作った穴とでは全然違いますよね。なんだかほかにもありそうな気が……。
菊地:「既存の照明用コンセント以外に賃借人が天井に取り付けた照明器具の跡」というのも注意したほうがいいでしょう。これはもともと部屋にある照明の取り付け金具ではなく、借り主が自分の好みの照明を取り付けたことで生じた金具の跡という意味です。この点についてガイドラインは「通常使用を超える」としている。つまり借り主が原状回復費用を負担する必要があります。
──原状回復義務が明確になったからといって恣意的な解釈をしてしまうと、思わぬ落とし穴にハマりそう。
菊地:「通常の使用方法」とは、誰が借りても同じように劣化したり汚れたりするということです。そういう意味でいうと、ペット可の物件だったとしても、猫が爪をといで壁紙が剥がれたりすれば原状回復費用の負担義務が生じるでしょう。通常を超えた異臭が部屋につけば、クロスの張替え費用まで負担しなければならない可能性があります。
──法改正がされたからと言って油断せず、節度と常識を持って綺麗に保つのがいちばんですね。気をつけます!
【改正ポイント②】
・基準が明確になってもボーダーラインには注意
沼澤典史=取材・文 石井あかね=イラスト


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