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「みんな、街でSUVに乗りたいんだ」という気付き

そもそもSUVの最大マーケットであるアメリカには広大な砂漠も壮大な水辺もあるが、ほとんどの人は週末のスーパーマーケットへ繰り出す際に、トランクの小さいセダンより、荷物の積みやすいという理由でSUVを選んでいたのだ。
「大きな岩がゴロゴロと転がっていているような場所へ、誰も行ってないじゃん」とBMWは見抜いたわけだ。結局この「X5」と「ハリアー」の成功を機に、多くのSUVがよりオンロードでの走行性を重視したモノコック構造を採用するようになった。
この写真だけ見るとセダンだと思ってしまうような高級感のある室内。当初は5速ATのみだったが、2003年から6速ATモデルも追加された。
さらに「X5」は「今までのSUVとは違うんですよ」ということを明確にするため、SAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)と名乗った。要はほかのBMW社のセダンやクーペ同様、「駆け抜ける歓び」とプレミアム感を持ったスポーティな車だということだ。
乗れば当時の5シリーズセダンとの違いは、視線が高いことと、車内が広いことくらい。え、これSUVだよね? と思えるほど、それまでのSUVとは乗り心地やステアリングの操作感が違うものだった。
しかも2001年に4.6LのV8エンジンを載せた「4.6is」が追加された点は、高級セダン路線を進んだ「RX」とは異なる点だ。「sの文字は、高いスポーツ性能を象徴」と資料に書かれた通り、最高出力347ps/最大トルク480Nmを発揮、0-100km/hは6.5秒と(当時としては)スポーツカー並みだ。結局、2代目にはハイパフォーマンスモデルである「M3」や「M5」と並ぶMモデル「X5 M」もついにラインナップし、現行型まで続いていく。
スポーツグレードの4.6isは2004年には4.8Lの4.8isへ進化。最高出力360ps/最大トルク500Nmを発揮、0-100km/hは6.1秒に。
「X5」の活躍を追うように、2002年にはポルシェが初のSUV「カイエン」を市場に投入。以降ジャガーやランボルギーニ、アストンマーティンなどから“サーキットも走れるSUV”が次々と登場してきた。
“岩場よりアスファルトでの快適性を”、そして“岩場よりサーキットでの走りを”という新たなSUVの価値観の礎を築いたのが初代「X5」なのだ。
「人気SUVの初代の魅惑」とは……
今はまさにSUV興隆の時。戦後、軍用車をベースに開発した車をルーツに持つSUVは多種多様な進化を遂げ、今や世界中で愛されている。そして、どのSUVにも当然、初代がある。そこには当代が持たない不動の魅力があり、根強いファンがいる。彼らを夢中にさせる“人気SUVの初代の魅惑”を探ろう。上に戻る
籠島康弘=文


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