アメ車の魅力と実用の融合で大ヒット
こうしたなか、「ワゴニア」はさらにラグジュアリー志向を高めていくが、一方でメーカーとしては「ワゴニア」に手が届かない若いファミリー層の獲得もしたいところ。そこで1974年に開発されたのが、初代「チェロキー」というわけだ。
中身は「ワゴニア」と同じながら、ラグジュアリーな「ワゴニア」に対して、若者にウケるようスポーティなイメージを強調するため、当初は2ドアのみだったのが最大の特徴だ。
インテリアでも“スポーティ”を強調するため、運転席と助手席の座面はそれぞれ、座面の端が少しせり上がったバケットシートに。運転席と助手席に挟まれた真ん中は、狭いながらもフラットな座面があるので、「ワゴニア」同様、前席3人+後席3人の6人乗りだ。1977年には4ドアモデルも追加された。
そして1984年、日本でも大ブレークした2代目「XJ型チェロキー」が登場。SJ型のトラックベースを離れ、当時としては画期的なユニフレーム構造となり、サイズも、フルサイズのSJ型の全長約4.7mから、約4.2mにグッとコンパクト化された。
日本に輸入された当時、ちょうどRV(レクリエーショナル・ビークル)ブームが高まっていたこともあり大ヒットした。ちなみに「チェロキー」が生まれたことで、「ワゴニア」はここからさらに高級なSUV志向へ邁進すべく、「グランド・ワゴニア」へと進化していく。
それにしてもヨーロッパや日本でスポーティなコンパクトハッチバックを3ドアに、実用モデルを5ドアとして分けて作ることがあるけれど(最近はすべて5ドアが多い)、アメリカ人は全長5m近くのSUVでも2ドアを作ってしまうというワイルドさ。そのスケール感がまた、古いアメ車の魅力なのだ。
「人気SUVの初代の魅惑」とは……今はまさにSUV興隆の時。戦後、軍用車をベースに開発した車をルーツに持つSUVは多種多様な進化を遂げ、今や世界中で愛されている。そして、どのSUVにも当然、初代がある。そこには当代が持たない不動の魅力があり、根強いファンがいる。彼らを夢中にさせる“人気SUVの初代の魅惑”を探ろう。
上に戻る 籠島康弘=文