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『ゲンボとタシの夢見るブータン』実に1000年以上続くという仏教の古刹と、その寺の家族の葛藤を描く。
『ゲンボとタシの夢見るブータン』「世界一幸福な国」と称されるブータン。しかし急速な近代化にともない、人々は多様な価値観を持つようになる。実に1000年以上続くという仏教の古刹と、その寺の家族の葛藤を描く。伝統衣装「ゴ」の着こなしにも注目を。 © SUNNY FILM
続いては急速な近代化の波が押し寄せるブータンを舞台にした『ゲンボとタシの夢見るブータン』だ。
「16歳の兄ゲンボと、15歳のトランスジェンダーの妹タシが主人公。彼らの家というのが、1000年以上続く古い寺。ブータンは今、仏教によって幸福を得るという親の世代と、あらゆる情報が手に入る若い世代の間に、価値観の違いが生まれているんです」。
父はゲンボに仏教の大切さを説き、タシに女の子らしく生きる努力をしなさいと諭す。もちろん子供たちの将来を慮るゆえだ。世界のどこにでもある家族の葛藤であり、それが装いにも現れる。
「ブータンではKーPOPが大ブーム。タシは韓流スターのスウェットを着用。ゲンボは、本当は寺を継ぐのではなくサッカー選手になりたい。だからナイキのウインドブレーカーを着ているんです」。
『大いなる沈黙へ』舞台はフランスのグランド・シャルトリューズ修道院。修道士たちは毎日を祈りに捧げ、一生を清貧のうちに過ごす。
『大いなる沈黙へ』舞台はフランスのグランド・シャルトリューズ修道院。修道士たちは毎日を祈りに捧げ、一生を清貧のうちに過ごす。ここに入るとき持参できるのは、身の回りの品を入れる小さなブリキの箱のみ。世俗と隔絶された世界である。 © A Philip Groning FilmProduction
2014年公開の『大いなる沈黙へ』は、近年のドキュメンタリーにおける最大ヒット作のひとつ。
「グランド・シャルトリューズ修道院への潜入記。ここにカメラが入ったのはもちろん世界初」。
撮影の許可が下りるまで実に20年近い年月を要したとか。ただし、インタビューも照明の持ち込みも不可。タイトルのとおり全編にわたり沈黙が支配する。
「年老いた僧侶が台所に立って野菜を切る。そのトン、トン、という音が実に印象的。また彼の着る青いローブが、フィルムの中で実に格好良く映る。フェルメールの絵画のようなんです」。


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