「一般人が知らない場所、知らない生活について伝えてくれるのがドキュメンタリー映画の価値のひとつ。我々が普通に生活していたら知りえない、言うなれば“世界の僻地”に触れることができるということです」。
そう語るのはドキュメンタリー専門の配給会社、サニーフィルムの代表を務める有田浩介さんだ。
ドキュメンタリーの中の部屋着は衣装係もいない、リアルクローズ。だからこそ、“世界の僻地”の実情が滲み出ている。そこから何を読み取るのか? それがドキュメンタリーの醍醐味のひとつだと思う。
「まずは『CRESTONE』というドキュメンタリーを。タイトルはロッキー山脈の麓にある街の名前。そのクレストンの中心部から離れた砂漠地帯で、マリファナを育てながら暮らす“サウンドクラウド・ラッパー”たちを追っています」。
そう聞くとギャングスタ的ラッパーを想像してしまうが、映るのはどこにでもいそうなアメリカの若者たち。ダボダボのチノパンを腰ばき。上半身はTシャツあるいは裸である。
「インターネット上で自分をどう演じるかばかり考えているような、現代っ子なんですよ。“目指せ100万回再生!”みたいな(笑)。
彼らの音楽ジャンルはトラップ(ハードコア・ヒップホップの一種)。音楽レーベルとは契約せず、SNSで配信しながらインターネットミームを狙う。若いラッパーの典型的なスタイルですね」。
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