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2020.07.06

ファッション

「ガウンとローブは室内専用ジャケット」リモート時代の部屋着の新常識

いやいや、まさか世界の人々の服装が感染症をきっかけに大変革を迎えるなんて想像もしていなかったですねえ。
仕事もプライベートも「新ノーマル」の社会ではそのステージが一挙に外から内へとシフトした。服装もそれに従い「いかに室内で快適に過ごせるか」が最大の目的になる。節分じゃないけど「服は内!」というわけだ。
林 信朗●1954年生まれ。数々の男性ファッション誌編集長を務め、フリーの服飾評論家に転身。映画登場人物の装いに精通し、世界中のファッションを見てきた確かな知識とともに紹介してくれる。
しかしだなあ、この「服は内!」、けっこう難題なのだ。なぜだかおわかり? 答えはね「他人の目」が家には存在しないからなのですよ。
仕事でも、プライベートでも外にいる限りぼくたちは常に「他人の目」にさらされている。だから服装に気を使うし、お洒落のしがいもある。ファッションには舞台と観客が必要なのだ。だが、ひとり暮らしの家には「他人の目」はない。家庭を持っている人でも家族は他人とは呼べないでしょう? パートナーは他人だが、それも最初のうちだけ。一年もすればお互いにダレて、しだいに遠慮というものがなくなってくる(笑)。
それが見事に表れるのが服装なんですね。ユルく、だらしなく、代わり映えしなくても平気になってしまうのですよ。着替えといえば「パジャマからパジャマ」というプログラマーがいるというハナシをぼくは娘から聞いたことがある(笑)。これでは、元も子もないじゃないか。ファッションは終わった、である。
そこでぼくが提案したいのがローブとガウンである。生地、形もいろいろだが、ざっくり「室内で着るジャケット」と捉えてくださってもけっこうです。こいつを着ることでホームライフにもぐっとスタイルとメリハリがつく!
公開から20年以上経ってなお男たちの憧れであり続ける『ファイト・クラブ』のブラッド・ピット。
公開から20年以上経ってなお男たちの憧れであり続ける『ファイト・クラブ』(1905円、ブルーレイ発売中。発売/20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン)のブラッド・ピット。作中で着こなしたレザージャケット、開襟シャツ、Tシャツ姿がどれも印象的だった。特に、ムキムキな身体でこのかわいい柄のバスローブを装う姿は文句なしの格好良さ。 © 2014 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
さて、ローブとガウンというと皆さんのアタマの中で浮かぶのは、ガウン=英国貴族が暖炉のそばで葉巻をふかしながら寛いでいるときに羽織っている、前を帯状のベルトで結んだベルベットの上着ですかね。ローブはバスローブでお馴染みの、風呂上がりに着るタオル地の羽織りものというところでしょうか。
両イメージとも間違いではないが、大本をたどれば、ローブもガウンも長くゆったりとした、主に被りものの上着のことで、中世ヨーロッパでは男女の隔てなく着ていたんです。それが、時代とともに儀式などで着るフォーマルで伝統的な「見せるための服」という意味合いが強くなったんですね。
たとえばローマ法王のお召しになっている服はどれもローブと呼んでさしつかえない。英国のオックスフォードやケンブリッジ大学などの黒いビロンとした制服、裁判官の法服もガウンでありローブでもあるんです。忘れちゃいけないのがボクサーのピカピカしたガウンで、あれなんかいかにも儀式的じゃないですか。
知識としてそういう服飾史を押さえておいたうえで言いますよ、ぼくらが着るローブやガウンは儀式的なものではなく、最低限のクラス感を持ちながら、カジュアルな気分で羽織れる「室内ジャケット」なのであると。
その一番手が、テリークロスつまりタオル地のバスローブなのです。
先述したが、皆さんもホテルでお試しになったことが何度もございましょう。こいつに着慣れすると人生が二段階ランクアップしたような気がします。その名のとおり、バスを使ったあとに着るのが第一義である。そのためにタオル地でできている。
「林さん、あのバスローブってやつは裸に直接着るものなのでしょうか? それとも下着の上に?」と以前聞かれたこともある。それはどちらでもよろしい。だが、もともとの目的が体についた水分と、風呂上がりの汗を吸収するだから、裸が本来なんでしょうな。しかし、家族の手前、前がはだけたりするのがマズイならアンダーパンツだけははくようにしようよ。


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