一見お馴染みのタイダイTだが、その染色には京鹿の子絞りの技術が息づいている。「伝統工芸士、重野泰正さんによる絞り染め。“板締め絞り”という手法でシャープかつモダンな印象に仕上げています」。
作りも実に凝っている。前身頃、袖、後ろ身頃を一枚布で形成。単純なビッグシルエットではなく、裾に向かって絞りを入れることで腰に引っかかり、シルエットに動きを生んでいる。
「素材にはシャリ感のある夏向きのものを採用。もしTシャツがドレスアイテムとなったら……そんな未来を想像して、ディテールなどは極力ミニマルに作りました」。
| レインメーカーの渡部宏一さん 京都のモリカゲシャツにてオーダーメイドと既製服のデザインを学ぶ。テーラードを軸にしたクラシックスタイルに、多彩なカルチャーとモードを取り入れた服を提案。2012年に自身のブランドであるレインメーカーを設立した。 |
はたしてこれはなのか? 既存のTシャツ観を覆すものである。「単調なTシャツに頼りがちな夏のスタイルに、重ね着の要素を取り入れたかったんです」。
素材は夏のスーツなどに用いられるトロピカルウール。上品な光沢とさらりとした感触が持ち味の生地を用い、インナーをはさめるようオーバーサイズで仕立てている。フリンジのようにサイドに垂らした生地は、ドレープを強調する役割を果たす。
「ワイドなショーツを合わせてほしい。小物はストローハットが気分です」。24歳の気鋭デザイナーが作り出した“新しいTシャツ”である。
| シアージのニコラ・ユタナン・シャルモさん オンラインをベースとしたブランド、シアージのデザイナー。2018年7月のスタート以来、その個性ある服とスタイリングで世界中から注目を集めている。パリで生まれ育ち、現在は恵比寿が拠点。タイとフランスをルーツに持つ。 |
清水健吾=写真 菊池陽之介=スタイリング 加瀬友重、髙村将司、いくら直幸、秦 大輔、今野 塁、菊地 亮=文