アメリカのマスターピースとの関係
「アサヒシューズはかつてアメリカや国内の著名ブランドのOEM生産を請負っていました。アサヒにラインナップされるモデルはその幕開けとなる1970年代のアーカイブに範をとっていますが、ブランドの名は明かせません」(横田さん)。
現在、アサヒがメイン・コレクションとして展開しているのは「アサヒ デッキ」「アサヒ トレーナー」「アサヒ ベルテッド」の3つ。横田さんの男気を買って野暮なことはしないけれど、スニーカーに一家言ある読者ならいずれも見覚えがあるだろう。
アサヒ デッキはアメリカの名作デッキシューズを参考に商品化した自社ブランドの「ビッグベン」がルーツだ。その確かなものづくりで、著名ブランドのOEMを引き受けてきたのは知る人ぞ知る話である。
アサヒシューズは数々のランニングシューズも手掛けてきた。往年のマスターピースをもとにつくりあげたのが「アサヒ トレーナー」だ。先に説明したとおり、ソールは職人の経験と勘が頼りのその時代のプロセスを経て完成する。
「アサヒ ベルテッド」のルーツはバスケットボールシューズやテニスシューズ。耐久性を求め、キャンバスに変わるアッパーの素材としてポピュラーになりつつあったレザーはバルカナイズ製法と相性が悪く、ソールの剥離やアッパーの亀裂が指摘されていた。 アサヒシューズはソールとアッパーの間にコットンテープを挟むアイデアでこれを克服、このジャンルでも一世を風靡したのだった。
しかし、それにつけても目を引くのは展開点数の少なさだ。アサヒシューズはその狙いについて、いみじくもこう語っていた──このブランドは売り上げを稼ぐよりも製造現場のブラッシュアップを図るために存在している。海外から引き合いをいただいているが、やみくもに規模を拡大するようなことはしない、と。
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