ナイキはエアを。アシックスはゲルを
コチラは気鋭のブルガリア人デザイナー、キコ コスタディノフが2016年に立ち上げた同名ブランドとのコラボレーションモデル。アシックスタイガーをアシックス・ブランドの1カテゴリーとなるアシックス スポーツスタイルに落とし込んだのは2019年のこと。それだけ聞けば降格人事のようだけれど、事実はむしろ逆だ。
アシックスタイガーはアーカイブをベースとしたデザインワークをその特徴としていた。アーカイブには限りがある。新たなジャンルを創造しようと思えば、アーカイブ縛りは文字どおり“枷”になる。
つまりアシックス スポーツスタイルへの合流は、「日常をパフォーマンスでアップデートする」(御所野さん)というアシックスタイガーの根幹にあるものをより広く展開しようという試みである。
キーテクノロジーとなるゲルのルーツは日本の化学メーカー、タイカが発明したアルファゲルだ。アシックスは高さ18メートルから落とした生卵がビクともしない驚異の衝撃緩衝力に可能性を感じ、ゲルを新たなソール材の目玉とすべく全精力を傾けた。1986年に発売されたジョギングシューズGTIIが映えある搭載第一号となった。
アシックスがゲルに関心を寄せた背景には、80年代中頃に始まった衝撃緩衝材の開発競争があったが、このレースにエントリーしたのはアシックスを除けばナイキくらいなものだった。つまり、レースといっても実際はナイキとアシックスの一騎打ちの様相を呈していたのである。
そうしてナイキはエアを、アシックスはゲルを創造した。
同胞としては大変誇らしいエピソードだが、アシックスのこれまでの歩みを考えればさして驚くことではない。今やスニーカーの部材として欠かせない合成樹脂、EVAを世界で初めてスパイクに採用したのはアシックスだった。1973年のことだ。
アシックススポーツ工学研究所。ゲルはもちろん、数々のテクノロジーがここで生まれている。ゲルは現在、アシックス・テクノロジーの根幹となるマテリアルだ。その中核を担うのがアシックススポーツ工学研究所。1985年に設立された、言わずと知れたその道のオーソリティである。
GEL-PTG MT G-TXに搭載されたフューズゲルは2016年に開発された。スポンジにゲルを融合させることに成功したマテリアルで、衝撃緩衝性能はそのままに軽量性を獲得、今や続々とニューモデルがリリースされるテクノロジーに成長した。
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