「時短ケアのススメ」とは……街中で「高地(低酸素)トレーニング」体験できてしまうトレーニングスタジオ「ハイアルチ」のプロデューサーであり、Jリーガーを筆頭に多くトップアスリートのフィジカルコーチを務める新田幸一さんに、短時間でも効果抜群のトレーニング&ケア術をレクチャーしてもらう本企画。
長時間のデスクワークやスマホによって、無意識のうちに猫背になってしまいがちな現代人。猫背は骨格をゆがませ、全身にさまざまな不調をもたらす、最悪の姿勢だ。ナメていると、内臓の不調につながる可能性もある。とはいえ、デスクワークの時間を短縮するために仕事を減らすなんて無理な話。
そこで今回は、簡単かつシンプルな姿勢矯正のための超時短ケアを紹介しよう。
【教えてくれる人】新田幸一さん高地トレーニングを街中で体験できるスタジオ「ハイアルチ」の開発者であり、プロデューサー。長年のトップアスリートたちへの指導経験を活かし、高地トレーニングの効果を最大限に引き上げるメニューを構築。現在は、浦和レッズの槙野智章選手をはじめとしたトップアスリートのほか、大学駅伝の選手たちのトレーナーも務めている。
アンバランスな体の使い方が猫背をもたらす
猫背は筋肉や関節の痛みなどのメカニカルトラブルだけでなく、心のトラブルをも引き起こす悪姿勢。なぜ悪なのかと言えば、呼吸がしにくくなるからである。
「姿勢が悪くなると、胸を開いて肺を膨らませることができなくなるので、肺にたくさんの空気を取り入れられなくなリます。すると、脳が過剰に興奮した状態になり、交感神経も過活発となってしまうんです。交感神経は体を興奮状態に導く神経なので、日中に活発になっているぶんには体の動きが良くなって、活動的になれるのですが、夜までこの状態が続いてしまうと体を休ませられなくなる。これがずっと続いてしまうと、疲れがたまって体調不良が発生することもあります」。
深呼吸をするとき、無意識に胸を大きく広げる動作をするはずだ。これは、左右の肋骨をつなぐ胸骨から構成される「胸郭」という部位を大きく広げるためだ。胸郭が閉じていると、肺が押さえつけられて大きく膨らませることができなくなってしまう。
「胸郭が閉じている状態で運動すると、酸素を十分に取り入れることができないので、すぐに息切れしてしまうんです。さらに、呼吸が浅くなると眠りの質も大幅に低下します。これも疲れが溜まる原因のひとつです」。
では、なぜデスクワークなど同じ姿勢でいる時間が長くなると、自然と猫背になってしまうのだろうか?
「猫背は骨盤が後ろに倒れることで脊柱(背骨)が丸まってしまう状態です。理想の背骨の形状は横から見てS字になっている状態ですが、胸椎と呼ばれる胸付近に位置する背骨は、もともと前傾している形状となっていて前に倒れやすい構造になっているんです。だから、意識的に背すじを伸ばしてあげないと、体は自然と前に傾いてしまう」。
さらに、猫背のまま長時間いると、縮こまった筋肉に背骨が引っ張られたり、押さえつけられたりするので、さらに悪化していくという。
「背骨のS字カーブが崩れる原因として考えられるのは、体の前後左右のアンバランスさ。猫背はもちろん、『片方の脚だけに体重をかけて立っている』といったことの積み重ねでどんどん悪化します」。
そこで有効なのが、体をあえてアンバランスな状態にして、バランスをとる時短ケアだ。
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