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地道なPR戦略が爆発的人気を生む

さて真空二重壁構造の断熱ボトルという製品自体は、日本人にとってはそう珍しいものではない。しかし’09年設立という若い企業ながら、全米のボトル市場での売り上げは現在第1位。米ビジネス誌「インク500」の「成長著しい米国企業ベスト500」や、スポーツ誌「アウトサイドマガジン」の「就職すべき会社リスト」にも選ばれ、アメリカでは誰もが知るブランドとなっている。いったいその背景には何があったのだろうか。
「“いつでも冷たいビールを飲みたい”というのが断熱ボトルを開発したきっかけ。ポートランド近辺はクラフトビールが盛んな土地柄です。たくさんのブルワリー(醸造所)があり、ビール好きが多い。この“いつでも冷たいビール”というのが画期的でした。意外なことに当時のアメリカでは、ボトルに対して保冷あるいは保温という価値観がなかったのです」。
「ワインボトル」はご覧のとおり、一般的な瓶詰めワインの中身がピタリと収まる容量に設計されている。/ハイドロ フラスク
「ワインボトル」はご覧のとおり、一般的な瓶詰めワインの中身がピタリと収まる容量に設計されている。ボトルを覗き込みながら、おっかなびっくり注ぐ必要はもうない。夏の海辺やキャンプで、適度に冷えた白ワインが楽しめるとは! 750ml 6000円/ハイドロ フラスク(アルコインターナショナル 06-6563-7346)
大手アウトドアショップの「REI」、食料品チェーンの「ホールフーズ・マーケット」、ハワイ発のコーヒーショップ「アイランドヴィンテージコーヒー」などで販売を開始。少しずつブランドの名前を広めていった。そして地道だがきわめて効果的なPR戦略により、’15年頃から人気に火がつく。その戦略をごく簡潔に言えば「ボトルを配ること」である。
「南カリフォルニアやハワイといった“ビーチマーケット”に着目しました。山ではなく海。正直に言えば、山のアウトドアマーケットで断熱ボトルの新ブランドを売り込むには、ライバルが多かったという理由もあるのですが。まず、ライフセーバーたちにボトルをプレゼントしたんです。それからロコガールたちにも。彼、彼女たちはビーチで注目を浴びる存在。手にしているボトルも同じく、必ず注目されるというわけです」。
さらにはクイックシルバーやタウン&カントリー、ビラボン、オニールといった企業の、営業担当者にもボトルを配ったという。
「彼らは取引先のショップやビーチスポーツのコミュニティに顔を出しますよね。そこで会った人たちが、ハイドロ フラスクのボトルを目にする。そうしてサーファーやヨガを楽しむ人たちに広がっていったんです」。


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