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大手情報サービス会社「ブルームバーグ」の創業者で、前ニューヨーク市長を務めたマイケル・ブルームバーグ。
実業家、政治家として多くの実績を残してきた彼の言葉から、成功者の哲学を学ぶ。
ビジネスと政治で結果を残してきたマイケル・ブルームバーグ
1942年、マサチューセッツ州でポーランドからのユダヤ系移民の両親のもとに生まれたブルームバーグ。64年にジョンズ・ホプキンス大学電気工学科を卒業し、ハーバード・ビジネス・スクールで経営管理学修士号(MBA)を取得した。
金融業界でキャリアをスタートさせ、30代で証券会社大手「ソロモン・ブラザーズ」の共同経営者に就任。81年にブルームバーグを設立し、ウォール街の金融情報端末事業に参入、報道部門も軌道に乗せた。2019年、フォーブスの世界長者番付では9位となり、555億ドルの資産を有するとされる。
ブルームバーグの成功はビジネスだけに限らない。01年の秋、ニューヨーク市長選挙に共和党から立候補し、当選を果たした。その後、2期、3期と当選を重ね、13年12月に任期満了で退任するまでに、アメリカ同時多発テロ事件からの復興や、銃犯罪対策、気候変動対策にあたってきた。
14年にブルームバーグCEOとして復帰をしたブルームバーグは、16年、アメリカ大統領選挙に出馬を検討していることが明らかにしたが、支持率など情勢判断を行った末に断念。20年にも大統領選に名乗りを上げたが、同年3月に撤退を表明した。
1. ニューヨークは夢を抱いている人の街だ。何度も素晴らしい夢が試されてきて、アメリカン・ドリームが実現してきたところなんだ
移民の中流家庭の出身ながら、自らのでビジネスを成功させ、さらにニューヨーク市長を3期務めたブルームバーグは、まさにアメリカンドリームの体現者だ。
市長時代には、ニューヨークでの生活基盤を安定させる政策を実施。また、優れた実績を残した教職員の給与を引き上げるなどの教育改革や、禁煙条例などによる市民の健康増進、治安の向上に手腕を発揮した。
2. 人生を通して、自分が正しいと思うことを口にするのを恐れてはいけない。それがどんなに周りの意見とは違っていても
14年、ハーバード大学の卒業式スピーチでの言葉。アメリカでは、全米ライフル協会(NRA)の政治的圧力と、国民の武器保持の権利を定めた憲法修正2条が、銃規制の推進を阻んでいるが、ブルームバーグは長年、銃規制に向けてあらゆる取り組みを進めてきた。
ニューヨーク市長としてだけではなく、14年の設立にも関わった、銃犯罪の撲滅を目指す団体「エブリタウン・フォー・ガン・セイフティ」には継続して多額の資金援助をしている。20年のスーパーボウルでは、最も注目度の高いハーフタイムショー後に広告費約1100万ドルかけて、銃規制を訴える広告を放映した。
3. どんな組織においても、マネジメント上の一番大きな失敗は、目標を達成できないことではなく、機会を失うことだ
「ブルームバーグ」では、「ロイター」と「ダウ・ジョーンズ」の独壇場だった、ウォール街の金融情報端末事業に参入を果たし、ニューヨーク市長としては、各方面から反発のあった税制改革や、他の地域と比較しても厳しい銃規制などを実施してきたブルームバーグ。
あらゆる場面で挑戦的な目標を掲げ、それを実現することで現在の地位を確立してきた彼ならではの言葉だ。
4. 自分自身の権利のために立ち上がることよりも、他の誰かの権利のために立ち上がることの方がずっと重要だ
ニューヨーク市長を務めていた10年に、アメリカ同時多発テロ事件の跡地の近くにモスクを建設する計画が持ち上がり、多くの反対の声が巻き起こった。この時、ニューヨーク市の歴史的建造物委員会は、建設を可能にする判断を下している。
ブルームバーグは14年のハーバード大学でのスピーチのなかで、人道と法の下の平等の観点から妥当な判断だったとしている。
5. 優秀な高校生たちが、家族の財政状況を理由に大学に進めない状況は改善されなければならない
ブルームバーグの両親は決して裕福ではなかったが、彼らは、NAACP(全米黒人地位向上協会)などに寄付をしており、父親は子供だったブルームバーグに「誰かに対する差別は、全ての人々に対する差別だ」と教えたという。
この考えはブルームバーグの2人の娘にも受け継げられ、次女のジョージナ・ブルームバーグは飼い主のいない犬の保護・里親探しの活動や動物愛護に取り組んでいることでも知られる。
また、ブルームバーグは多額の寄付を行っていることでも知られる。フォーブスの米国で最も寄付金額の多い富豪リストでは、2014~18年の5年間で、ウォーレン・バフェット、ビル・ゲイツとメリンダ、ジョージ・ソロスに次いで4位となった。
この5年間の寄付額は30億ドルで、保有資産に占める割合は5%となった。20年の大統領選挙からは撤退したものの、今後もブルームバーグの動向は注目を集めることになるだろう。
谷村光二=文 gettyimages=写真
記事提供:Forbes JAPAN