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既に「コロナ鬱」なる現象も出始めている

実際、わかりやすい例として、在宅勤務が長引く社員たちが、ストレスで「コロナ疲れ」「コロナ鬱」なる状態になっているという話が徐々に出てきました。最初こそ「通勤地獄がなくなった」「もっと早くやっていればよかった」と楽観的な「テレワーク万歳」論が主流でしたが、すでに今は「テレワークって結構辛いよね」に変わっています。
これはテレワークが悪いのではなく、上述のようにテレワークに必要な能力をマネジャーたちが身につけていないので、起こっていることでしょう。テレワークで、メンバーをマネジメントしにくくなったため、「もう自由にしてもらおうか」とマネジメントを放棄してしまったのです。
 

どんな変革も最初は「変革コスト」がアドオンでかかる

実際話を聞くと、ゴールだけ設定して、あとはよろしくと、アウトプットだけ見ている放置状態になっていることが多いようです。マネジャー側は「そもそも自由になりたかったんだよね」「テレワークだから手出しできないし」「だから、新しい働き方がんばって」という言い訳ができたともいえます。
しかし、違いますよね。最終的には効率的になるやり方でも、新しく導入する際には現行のやり方を進めながら、徐々に新しいやり方に変えていくなどのダブルコストが生じるものです。変革にはコストが必要なのです。ですから、テレワークが突然スタートした今こそ、マネジャー陣はいちばんパワーをかけていなければウソなのです。
 

それを「ホワイト」と言うことなかれ

それをせずに、「背景はともかく、君たちが欲しいものが手に入ったよね」と「ホワイト」なマネジャーぶるのは筋違いです。今は、まだ自転車のコマしか乗れない子供にするように、むしろリアルな場で仕事をしていたときよりも、ブラック的な超マイクロマネジメントをしながら、様子を見て、徐々に手を放していくという段階です。
嫌がられるぐらい関わって、大丈夫だと見届けてからようやく本当のホワイトなマネジメントに移ることができるのです。そうしない、現状の放置マネジメントはホワイトではなく透明なマネジメント、つまりマネジメントが「ない」ということです。
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まずは徹底的に「型」にはめよ

熟達化についての研究をみると、新しいスキルを身につけていく過程は、日本で昔から伝統芸能などで言われてきた「守破離」と同じく3ステップで進むとされています。まずは、既存の型を徹底的に「守る」。その上で徐々に自分らしくその型を修正していき(「破る」)、最終的には自分の「型」を確立して、既存の型から「離れていく」。
この3ステップで言えば、テレワークは多くのビジネスパーソンにとって、まだまだ「守」の段階であるのは明白です。突き放してはいけません。テレワークについての「型」をマネジャーが指定して、守らせなくてはなりません。
 

一部のプロを除いて、新人のように扱うべき

具体的には、既にテレワーク的な働き方をしていた一部のプロ以外は、全員新人のように手取り足取り、一から十まで行動レベルでの指示を行ってはどうでしょうか。
世の中では、もう新しい働き方が実現したかのように盛り上がっていますが、ものには順序があります。早晩、実現するでしょうが、その前に上述のマイクロマネジメントが必要な人も多いのではないでしょうか。
リアルのときにはあんなに自由にやらせてくれていたマネジャーが、テレワークになって急に細かいことを指示したり、聞いてきたりするようになった。これくらいに思われて、「今」はよいのではないかと思います。そして徐々に手を放してあげてください。
 
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「20代から好かれる上司・嫌われる上司」
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
石井あかね=イラスト  

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