OCEANS

SHARE

「仕事と暮らしを密にすること」のメリットとは?

リトルトーキョー
「僕、自宅がここから歩いて5分のところにあるんですよ。だからもし突然の雨が降ったら日中でも洗濯物を取り込みに家に帰ります(笑)。あとは仕事の合間にちょっと走って気分転換して、シャワー浴びてまた会社に戻るとか。いわゆる通勤時間がなくなったので、食事を作って妻の帰りを待つことも多いです」。
オフィスも内包するリトルトーキョーからすぐの場所に自宅を持つナカムラさんは、まさに生活の中に仕事が溶け込んでいるライフスタイルを送っている。スタッフの半分以上も徒歩圏に住んでいるそうだ。「仕事と暮らしを分けないようにしている」というナカムラさんの考え方は、どこから生まれたのだろうか。
「シンプルに、そのほうが楽で心地良いから。移動に時間がかかるのはもったいないし、サラリーマン時代からずっと、『満員電車がきついな』と感じていました。会社のすぐそばに住めば、仕事と暮らしの関係性をより密にできます。うちのスタッフもほとんど会社の近くに住んでいて、徒歩か電車通勤。もちろん、なかには仕事と暮らしのオン・オフをきっちりしたい、っていう意見もありますし、それぞれの心地良さを実現できればいいと思います」。
昨今、声高に叫ばれるワーク・ライフ・バランスとは真逆の発想。これこそがナカムラさんの「生きるように働く」だ。生きるように働くことで、生活にはどんな変化が訪れたのだろうか。
「仕事のクオリティが上がりましたね。単純に、それまで通勤によって奪われていた時間や体力に余裕が生まれるわけですから。詰め込まれた状態ではなかなか良い仕事ってできない。
ただ、生きるように働くって、ワーカホリックになるわけじゃなくて。ずっと残業していたら良いものができるかっていったらそうじゃないですよね。疲れていたら想像力は発揮できないし、効率も下がります」。
余裕があるからこそ生まれるクオリティがある。それは、『楽しみながら仕事をしたい、してほしい』という会社の代表としての想いだった。ナカムラさん自身、働き方を変えたいと強く思ったのはここ数年のことだという。
「会社をもっと良くしたいという思いだけが先行して、それまでは結構トップダウンで動かしていたんですよ。でも自分ひとりで頑張っても、自分の限界が会社の限界になってしまうし、一緒に働いているみんなも自分で考えて行動したほうが楽しいだろうなと思って。だから思いきって去年、4カ月の休暇をとってみたんです。まずトップがいなくなり、情報をオープンにして、事後報告でも良いということにしました。そうすることで社員にとっても新しいことに挑戦しやすい環境づくりをしようと」。
「自分ひとりでなんとかしなくては」という気負いを抱え、10年間走り続けてきたナカムラさんだったが、思い切って長期休暇を取り、すべて任せてみたら大きな気付きがあったという。
「あ、僕がいなくても大丈夫なんだって(笑)。だから失敗しても怒らないし、責任はとるから考えてやってみて、と言ったらみんな今まで以上に自主的にのびのびと働いてくれて、結果も良かったです。よく『全員が経営者たれ』って言う経営者がいるんですけど、経営者と同じような情報量や環境にしないとそれは難しい。環境が変われば、最初は戸惑うこともあるんですけど、自ずと変わっていくと思います」。
ナカムラさんの会社では、事後決裁にしたり、評価制度を一緒に考えたりするなど、今後も働き方を少しずつ改革しようと計画しているという。


3/3

次の記事を読み込んでいます。