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野村監督の名言③
「人間は、恥ずかしいという思いに比例して進歩する」。

野村監督は、数多くの著書の中で、昔から劣等感に苛まれていたことを告白している。
若手時代には先輩から「お前、ボールの握り方も分からないのか」と嘲笑され、南海時代の恩師、鶴岡監督からは「二流の投手は打てるが一流の投手はてんでダメだな」と突き放された。ファンからは、「カーブの打てないノ・ム・ラ」と野次られ随分歯がゆい思いをしたと聞く。
しかし、都度「野球においては全てそれを受け入れ、無知=マイナスと捉えず学ぶ理由と捉え、そこを補充していけばいい」と自分に言い聞かせ、日々練習と学びに明け暮れた。
野村監督が1年目を終え、京都の実家へ帰省したときのことである。久々に会った旧友に、「高そうな服を着ているな〜。いくらくらいもらっているんだ?」と聞かれたことがあった。
野村監督は、「稼ぎ? ご想像に任せるよ」と話したという。
そのとき身に着けていたものは、貯めに貯めてようやく購入したジャケットと、同期の友人から譲り受けたスラックスだった。自分を大きく偽ることで、それに見合うような男になるための努力をする原動力にしたのだ。
恥ずかしさとは力になる。でもそのために必要なのは、チープなプライドではなく謙虚さだ。
「“失敗”と書いて“成長”と読む」「人は挫折を経験して初めて謙虚になれる」――。思えば、野村監督の言葉にはミスを戒める言葉はほとんどない。むしろ歓迎する向きのほうが強い。そこから多くを学べると知っているからだ。
くよくよしていても始まらない。まずは、失敗から学び、それをどう未来へ還元できるかを考えることがもっとも大事なことなのだ。
春のなんでも3選’S
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菊地 亮=文


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