「春のなんでも3選’S」とは…野村克也氏がこの世を去ってから早くも2カ月が経とうとしている。彼
の残した名言の数々は選手たちを奮い立たせるだけでなく、ときに現代を生きる大人たちの指針となってきた。そんな野村監督の珠玉の名言集。
前回に続く第2回目は、春のスタートから躓いたときでも気持ちを奮い立たせてくれる3つの名言を。
野村監督の名言①
「便利は弱い、不便は強い。器用は弱い、不器用は強い」。
「器用な人間は何でもそつなくこなすが、器用貧乏との言葉があるように、基本や努力を疎かにし成長を妨げるケースが多い。
不器用な人間は何度も失敗するが、失敗から成長していくものだ」。言い得て妙である。“野村再生工場”との言葉を耳にした人も多いだろう。プレーヤーとしてのピークを過ぎた選手たちをチームへ招き入れ、見事にもうひと花咲かせる。その手腕に向けた賞賛の言葉である。
「俺のところへ来るオファーは弱小チームばかり」と野村監督はボヤいていたが、“功ある者を集めるより、功なき者を集めよ”(中国の兵法書『呉子』より)のごとく適材適所に選手を配置し勝利を得る姿は、まさしく名将と呼ぶにふさわしい。
そんな監督が「思いもひとしお」と語るシーズンが1997年だ。
その年、前の所属チームを戦力外となり、自由契約でヤクルトスワローズに入団した選手がいる。小早川毅彦氏だ。野村監督は彼に対し、
「これまでは天性に頼って器用にやってきたと思うが、やがては限界がくる。いっそ、不器用に徹してみたらどうだ」と言葉を投げかけ、投手を分析するようにアドバイスを送ったとか。
結果は周知の通り。シーズン前の下馬評を覆し、ヤクルトスワローズは2年ぶり5度目のリーグ優勝、4度目の日本一を成し遂げる。その勝利に、小早川選手は大きく貢献したのだった。
不器用であることを嘆く必要はない。失敗に失望し立ち止まる必要もない。そこからどれだけのことを学び、貪欲に成長していけるかが大事なのだ。
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