ひとりの若者が老舗の進むべき未来を照らし出した
20歳のジョナス青年は、トラックを駆ってアフリカ中を旅していた。電気のない広大な砂漠地帯を訪れた際、現地の生活を照らし続けていたのが使い込まれたペトロマックスのランタンだったそうだ。
その100年以上変わらない機能美に感銘を受けたジョナスは、帰国後にペトロマックスの商標権を買い取り、2008年からその長い歴史を継いで経営を始めることとなった。
日本に輸入し始めた頃のペトロマックスは品質があまり良くなく、販売も伸びなかった。ひとつ売るとひとつ修理に戻ってくるような状態で、1台も売れない月もあり、スター商事の中でもお荷物的存在のブランドだったそうだ。
しかし、ジョナスが経営に乗り出してからは状況が一変。ドイツに自社工場を作って職人を育てるようになり、クオリティが大幅に改善された。
それに伴い、日本でも徐々に人気に火がつき始め、現在は看板商品のランタン「HK500」は入荷すると即完売、生産が追いつかないほどの状態が続いている。
2008年を機に変わったのはクオリティだけではない。ジョナスは、ペトロマックスの商標を使い、ランタン以外の製品開発にも乗り出したのだ。
2013年からはダッチオーブンなど、クッキングギアの開発をスタート。焚き火台やブッシュクラフト関連商品も徐々に増やしており、今年からはウエアの展開も始まる。
100年以上もランタンだけを扱ってきたブランドが、ひとりの若者を機に大きな変化を見せ始めたのである。
歴史あるランタンには手を加えず、年々、炎にまつわる商品の新たなラインナップを充実させる。そんなジョナスが考えるブランドイメージは、「男の休日の遊び道具」だそう。
収納性や扱いやすさなどの利便性だけを追い求めるなら、他に選択肢はいくらでもある。ペトロマックスの道具たちは、どれも手間暇をかけることも楽しめる余裕がある大人に向けた選択肢だ。
大人なオーシャンズ読者の皆さんなら、もちろんこっちを選ぶでしょう?
[問い合わせ]スター商事03-3805-2651www.star-corp.co.jp池田 圭=取材・文 矢島慎一=写真