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外見と内面のギャップが磨いたデザイナーの感性

この気鋭のデザイナーは、いかにして誕生したのか。そのルーツを探ってみよう。
「オリジナルグランド ウィング オックスフォード ラグジュアリー」/コール ハーン
この日はコール ハーンの新作「オリジナルグランド ウィング オックスフォード ラグジュアリー」を着用。「履いた瞬間からこんなに足に馴染んだ革靴はないですね」と小田さん。3万8000円/コール ハーン(コール ハーン ジャパン 0120-56-0979)
体育教師の両親のもとに生まれた小田さんは、子供の頃から体が大きかったという。しかし、そのルックスには似つかわしくないほど病弱で、当時は喘息用の吸入器が手放せなかったそうだ。
「子供心に、外見と中身のギャップには悩んできました。外からどう見られているのかずっと気にしていました。でも、そのギャップを埋める作業にこそデザインの本質があるし、そういう意味では子供の頃からデザイナーとしての感性を鍛えてきたと言えるかもしれません」。
そんな少年時代の忘れられない記憶が、コム デ ギャルソンの発行したビジュアル・ブック『Six』である。
「ふらりと寄った古本屋で、好きなマンガの隣に無造作に突っ込まれていました。その本は人間のユーモアとかグロテスクとかが混然一体となっていて、今思えばファッションやデザインへの初期衝動を覚えたきっかけになってますね」。
体育教師の両親のもとで育った小田さん。恵まれた体格を持つが、甲高幅広でなかなか馴染む靴がないのが悩み。
長じて小田さんはファッションやグラフィックの世界を志し、多摩美術大学のグラフィックデザイン学科へ進学。卒業後は明和電機に入社した。小田さん曰く、明和電機は“中小電機メーカーに偽装した芸術ユニット”である。
2003年、明和電機は世界的な芸術・先端技術、文化の祭典「アルス・エレクトロニカ」のインタラクティブアート部門で準グランプリを獲得。世界で巡回展を行うことが決まった。そこで急遽グラフィックデザインができる人間が必要となり、小田さんに白羽の矢が立ったのだ。
その後は数社のデザイン会社を渡り歩いたが、一から十までセルフプロデュースで乗り切る明和電機で鍛えられた小田さんにとって、それらの仕事は勉強になりつつも、自分なりのやり方を模索する必要を感じていたそうだ。
そうして2011年、デザイン会社「コンパウンド」を立ち上げて独立する。
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