OCEANS

SHARE

タイムレス・ビークル「911」進化の歴史
THE 7 GENERATIONS of 911
歴代変わらぬボディフォルムにRR方式を採用し続ける911。唯一無二と言われる、その存在はまさにタイムレスであり、歴代のどのモデルをとってもいまだ人気である。そこで911の歴代モデルを振り返ってみる。
2004-180-1
1964年 901型
1964年 901型
通称ナローポルシェ。911シリーズの原点で、ポルシェ初のモノコックボディ&初の空冷フラット6エンジンを採用したスポーツカー。エンジンを車体後部に配置し、後輪駆動とすることで、ミッドシップ方式に近い運動性能と、狭いながらも4人乗りの実用空間を両立する。
1974年 930型
1974年 930型
2.7Lに始まり、’78年には3Lの911 SC(Super Carrera)が登場。’84年に3.2Lへ拡大するとともに伝統の「カレラ」の名が復活する。北米法規のために装着された衝撃吸収バンパーが特徴的で、前モデルより大型化されたことで“ビッグバンパー”と呼ばれた。
1989年 964型
1989年 964型
意匠は従来型を踏襲しているものの、中身は大幅に刷新。水平対向6気筒エンジンは3.6Lにまで拡大。サスペンションの変更に加え、パワステやABSをはじめ、4速ATのティプトロニックを搭載した。911初となる画期的な4WDシステムを搭載したカレラ 4もトピックだ。
1994年 993型
1994年 993型
排気量は3.6L。911で初めて量産ターボ車の4WD化を実現。’96年以降は後期型となり、可変吸気機構であるバリオラムを装備し、’98年まで生産された。最後の空冷モデルとして根強い人気を誇り、中古車市場では需要が高く、価格も年々上がり続けている。
1998年 996型
1998年 996型
賛否両論のある通称「涙目ポルシェ」。30年以上に及ぶ改良を繰り返してきたが、車体、エンジンともに完全新設計となり、初の全面改良となった。エンジンは空冷から水冷へ、インテリアやコックピット回りも近代化した。中古車市場では最も身近な存在。狙い目だ。
2004年 997型
2004年 997型
996で不評だった涙目形ヘッドライトを伝統に忠実な丸形に変更。’08年モデルの後期型から直噴化&PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)を採用し、スムーズな変速でよりスポーティな走りを実現した。8年間で約21万台が生産され、商業的成功も収めた。
2011年 991型
2011年 991型
997型よりホイールベースを拡大。大幅な軽量化と剛性アップに加え、旋回性を高めるアクティブスタビライザーを装備するなど、さまざまな部分で性能アップが図られた。後期型から初のターボエンジンを採用、その圧倒的なパフォーマンスで自然吸気派も納得させた。
1964年 901型
1974年 930型
1989年 964型
1994年 993型
1998年 996型
2004年 997型
2011年 991型

 

PORSCHE 911 TURBO S ポルシェ 911 ターボ S

PORSCHE 911 TURBO S ポルシェ 911 ターボ S
ボディサイズ:全長4510×全幅1880×全高1290mm
総排気量:3790cc
燃費:9.1L/100km 乗車定員:4名
価格:2630万円〜
991型の後期モデルから、ついに素のカレラでもターボが装着された911だが、それでもやはり「ターボ」と名の付くモデルは特別なことに変わりない。シリーズ最高峰であるターボ Sは、3.8L水平対向6気筒ターボを搭載し580PSを発生。4WDや可変エアロダイナミクスといったハイテクを装備し、その高出力を余すことなく速さへとつなげる。フロントノーズ下には格納式のリップスポイラーを装備。

[1]GTスポーツステアリングを採用したタイプ991後期型のコックピット。新型のタイプ992と比べて各種操作系統が独立していて直感的な操作がしやすい。
[2]オプションのエアロキット装着車。速度が上がるとリアスポイラーは自動的に上昇し、格納式フロントリップも同様にせり出て強力なダウンフォースを生む。
[3]3.8L フラット6+ツインターボは最高出力580PSを発生。0→100km/h加速は2.9秒、最高速度330km/hに達する。

911のフラッグシップ、誰もが憧れるターボ S

992型へと進化した911だが、よりハイグレードなターボやGT3はまだリリースされていない。911はグレード数が豊富で、ハイグレードなモデルはベースモデルから数年遅れて発売されることが多い。なので、現時点では、前型991のターボ Sがフラッグシップとなる。価格やスペックだけを見れば、ターボ/ターボ Sより上のモデルは存在するが、それらはサーキット走行を主な目的として造られた少し特殊な存在であり、ブランドとしてもターボ/ターボ Sを911のトップとして掲げている。
ターボ Sのエンジンをかけた瞬間、迫力あるサウンドが街の空気を変える。3.8Lの水平対向エンジンにはその名のとおりターボが加えられる。991型の後期モデルより、カレラシリーズにもターボが付くが、これは燃費効率を考えたもの。一方、ターボ Sのそれはパワーへのあくなき追求によるものだ。
911のフラッグシップ、誰もが憧れるターボ S
1973年のフランクフルトショーでベールを脱いだ911 ターボのプロトタイプは、翌’74年のパリサロンで930 ターボとして正式デビューした。そこから964、993型の空冷エンジンではもちろん、996、997型の水冷エンジンでも911の王者として君臨している。サーキットでのラップタイムを見れば、GTやRSといったスパルタンなモデルに軍配が上がるが、それらと同等の速さに加え、ターボには993から採用された4WDによる高速安定性、すなわち安心・快適さが備わる。手に汗握らず、天候や路面状況に左右されず、早く移動できるのはサーキット走行を得意とするようなGT系ではなくターボが有利なのだ。その移動も単なる移動ではなく、官能的なサウンドと思いのままのハンドリングが味わえる。腹に響くその音と振動はきっとクセになるだろう。
世はEVへの道に突き進んでいる。ポルシェもタイカンを発売し、今後のケイマン、ボクスターも電化される予定だ。だからこそエンジンの個性に存在価値が見いだされる。このフラット6ターボの躍動感は間違いのない魅力を持つ。「911は最後まで電化はしない」とポルシェは明言している。911を味わう時間はまだたっぷりとある。
いつでも911は男の心のどこかにある。ターボ Sの価格は2500万円オーバー。おいそれと買える代物ではないけれど、欲しいと思わなければ男が廃る。ターボ Sとはそういう車なのだ。
サーキット寄りからロード寄りまで
911グレードハイ&ロー
911ほど、単一モデルにこれほどバリエーションを揃える車はない。半世紀以上にわたってひとつのスポーツカーを造り続けてきたからこそ、さまざまなニーズに応えることができるのであろう。そこが911の面白さでもある!
2004-180-2
GT2 RS
GT2 RS
911で最もスリリングな1台。史上最強・最速の911であるGT2 RSだ。軽量化を狙い、4WDシステムをキャンセルしての700馬力/750N・mというモンスターパワーを発揮!
GT3 RS
GT3 RS
サーキット志向の911 GT3をベースに出力向上と大幅な軽量化、専用装備を施したのがレーシングスポーツを意味するレンシュポルトことRS。走りに徹した自然吸気の最高峰である。
GT3
GT3
「GT3」規格のレースに参戦すべく誕生。空力パーツとレース車両であるGT3カップカーからデチューンすることなく移植した自然吸気フラット6エンジンを備えた公道レーシングカーだ。
TURBO / TURBO S
TURBO / TURBO S
911の絶対王者。文字どおりターボ技術を採用したパワフルな高性能スーパーカーで、ブランドのフラッグシップとして街乗りからレースまでこなす。可動式のリアスポイラーが特徴的。
GTS
GTS
充実した装備を備え、街乗りでの快適性と、サーキットでも存分に楽しめる性能を持つ存在と定義されている。カレラ SとGT3の間を埋めるモデルとして位置付けられている。
CARRERA / CARRERA S
CARRERA / CARRERA S
スペイン語で「レース」という意味を持つカレラ。もともとは高性能グレードを意味したが、現在ではエントリーモデルに。ベースモデルとSの相違点はエンジン出力で、体感値はまったくの別物。
GT2 RS
GT3 RS
GT3
TURBO / TURBO S
GTS
CARRERA / CARRERA S

 
西崎博哉(MOUSTACHE)=写真 荻山 尚、安島利樹=文


SHARE

次の記事を読み込んでいます。