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スニーカーの達人・小澤匡行さんが語る「ランニングシューズの歩み」

ライター 小澤匡行さん
1978年生まれ、千葉県出身。編集・ライターとして雑誌やカタログなどを手掛ける。ファッション業界きってのスニーカーツウとして知られ、2016年には『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。近著に『SNEAKERS』(スペースシャワーネットワーク)の日本語監修など。
ランニングシューズを履いて街を走るランナー。今でこそ当たり前の風景ですが、1970年代以前には街で走っている人を見かけることはほとんどありませんでした。その頃はまだランニングは競技場で行うものと考えられていたからです。
では、なぜ街を走る市民ランナーが増えていったのか? その理由はランニングシューズの歩みと深い関係があります。
まず、ランニングシューズの黎明期というべき1970〜’80年代。この時代は「衝撃吸収」の時代でした。それまでの衝撃吸収素材はゴムが主流でしたが、この頃から各ブランドがゴムよりも軽くクッション性に優れた合成樹脂・EVAを使い始めたんです。結果、硬いオンロードを快適に走れるようになり、市民ランナーが急増しました。’78年にはナイキがエアを搭載したモデルを発売し、’80年代にはニューバランスがブランドを象徴するミッドソールのひとつ、ENCAPを搭載した「M990」をリリースします。
日本がスニーカーブームに沸いた’90年代頃は「アッパー」の時代。アッパー素材がキャンバスやナイロンから伸縮性に優れたシンセティックへシフトしていきます。
その後、スニーカー人気が落ち着いた2000年のキーワードは「裸足感覚」。ナイキフリーやビブラムのファイブフィンガーズなど、ベアフットランニングの感覚を取り入れたスニーカーが注目を集めました。
2010年代は糸で編まれた「ニットアッパー」。ナイキのフライニットをはじめ、靴下のようなフィット感と軽量性を持つモデルが続々と登場しています。
で、現在はというと、ひとつは「推進力」。着地の衝撃を前に進むエネルギーに変換する厚底ソールのランニングシューズがマラソン界を席巻しているのはご存じのとおりです。
そしてこれから到来するのが「3Dプリント」の時代です。たとえば、アディダスが開発した「アディダス4D」。マイクロメーター単位でデジタル設計されたミッドソールは複雑に入り組んだ立体感のあるグリッド構造が特徴。見た目も斬新ですが、バネのようなグリッドが着地の衝撃を分散するだけでなく、ホールド性や推進力を生み出します。こうした3Dプリント技術はランニングシューズのデザインや機能性に革命を起こすテクノロジーとなるでしょう。
半世紀の間にランニングカルチャーがこれほど成熟した最大の理由はランニングシューズの目覚ましい進化にほかなりません。そして優れたランニングシューズはプロだけでなく、市民ランナーにも多くの恩恵をもたらします。最先端のテクノロジーを搭載したモデルを所有すれば、ランニングがもっと快適になるし、走りたい気持ちも高まるはず。走ることを楽しむために、最高のランニングシューズを選びたいですね。
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鈴木泰之=写真 星 光彦=スタイリング 押条良太(押条事務所)=編集・文


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