今でこそ当たり前のようになっている、ドレスシューズのアッパーにスニーカーソールのデザイン。これを初めて打ち出したのは、おそらく日本ブランドの「オルフィック(ORPHIC)」である。
その誕生までの歩みを追った前半に続く後半戦。デザイナー・白川貴善が今、考えることとは?
素人目線を忘れない
「デザインに関しては、とりあえず思いつくものを全部載っけます。載っけたうえで、いらないものを省いていく。上がってきたサンプルを見て、引きすぎたと思えば新たなアイデアを加える。その繰り返しでオルフィックの靴は完成します」。
オルフィックはミニマルでモダンな佇まいも見逃せないが、自分はデザインの勉強をしたことがないし、自分をデザイナーだと思ったことは一度もない、という。
「今も靴を見る目は素人のそれです。ここをこうすればいいのに、という思いは10代の頃からずっとあった。その違和感をデザインに落とし込んでいます」。
素人でも一発当てることは不可能ではないが、継続するのは難しい。しかし、白川にそのセオリーは当てはまらなかった。
シューズメーカーなら絶対やらないだろうと笑う、欧米用のナロウなラストを採用したスニーカー「メソッドネス ライト」(置いたときの佇まいを重視した結果、一般的な日本人の足には合わない。仲間は1サイズアップして履いているという)や、正面から見ればブリティッシュ・ロックな面構えなのにサイドがぽっかり空いている「セッズネス」など、どれを見ても斬新な中に新たなマスターピースの可能性を予感させる。
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