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昨年5月に銀座アルマーニタワーで行われた記者会見。ジョルジオ・アルマーニはインタビューが行われた60分間、美しい姿勢を保って1度も座らなかった。当時の彼は84歳、恐ろしいほどの美意識だ。
ストイックすぎるアルマーニのモチベーションはどこからくるものなのか?『
「イノベーター」で読むアパレル全史』の著者・中野香織氏が解説します。
男性像、女性像に大きな変革をもたらしたアルマーニ
優れたファッションデザイナーとは、服よりもむしろ、時代が求めている人間像をデザインする力のある人のことである。ジョルジオ・アルマーニは、まさにその1人である。
20世紀において、男性像、女性像の両方に大きな変革をもたらした。アルマーニは1975年に41歳でジョルジオ・アルマーニ社を設立した。医学部で人体構造を学んだ経験を生かし、メンズスーツに革命を起こす。
固い芯地でよろいのように男性を武装させていた従来のスーツの構造を解体し、つややかで柔らかな素材を使い、芯地のないアンコンストラクティッド(unconstructed:堅牢な構築物ではない)という製法のジャケットを世に出した。
着る人の骨格の動きを流麗に見せるスーツは、映画『アメリカン・ジゴロ』(1980年)で主役のリチャード・ギアの衣装に採用され、アルマーニのスーツは社会現象にまでなった。官能的なアルマーニのメンズウェアを身に着けたギアは新たな時代を象徴する男性像となり、1980年代の男性は、個性やセクシーさを表現することを楽しみ始めた。
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