本場・インドでのアシュタンガヨガの鍛錬
日本で多くの愛好者を生んだアメリカ流のヨガと異なり、高い技術力を要する独創的なポーズの数々が特徴のアシュタンガヨガ。発祥の地・インド南部のマイソール地方には総本山である道場があった。初めて訪れるヨガの聖地で何を感じたのか。
「世界中からアシュタンガヨガを学ぶために人々が集まっていて、当然ながらモチベーションもレベルも高い。エネルギーをすごく感じましたし、自分の学びたいものが詰まっていると思いました」。
世界中から達人と呼ばれるヨガ指導者たちが集結するなかで、最初は修行についていくだけで必死だったという更科さん。しかし、不思議と辛くはなかった。
「集中力や技術力は求められますが、やるべきことは決まっているのでわかりやすい。継続的な練習を重ねて決められたシークエンスを進め、師から許されれば、より難度の高いポーズに挑戦できるいうシステマチックなところが面白いんです」。
以来、更科さんはインドと日本を行き来して修行を重ね、今から10年前、32歳で正式指導者資格である「Authorization」を与えられた。インドでの過酷な修行を続けられたのはなぜだったのだろう。
「何のためにやるのかを明確にすれば継続も苦にはなりません。僕にとってヨガは、より良く生きるための術だし、やればやるほど心も体も満たされるもの。心と体は必ず繫がっているので、どちらか一方だけを鍛えればいいというものでもありません。自分にとって本当に大事なことがわかれば、判断にも迷いません」。
20代でヨガを始め、波だっていた心が穏やかになった。心が落ち着けば人生に客観的な判断を下せるようになり、本当に自分に必要なものは何かがわかるようになる。無駄なものを削ぎ落とした日々の先で、更科さんはヨガを仕事にすることを決意した。30代からスタートしたヨガ講師としての歩みは後編で。
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後編はこちら
藤野ゆり=文 小島マサヒロ=写真