俳優を志した20代。昼夜逆転の生活で体はボロボロに……
「子供の頃から体を動かすことが好きで、学生時代はサッカーばかりしていました」。
北海道・札幌出身の更科さん。高校時代、サッカーでは札幌代表に選ばれるほどの実力を持っていたが、幼い頃から常に競い合う世界にいることで、サッカー自体を楽しめなくなっていたという。
「19、20歳で俳優をやりたいなって上京したんです。でも俳優の仕事だけで食べていくのは難しくて、夜はほぼ毎日バーテンダーのアルバイトをしていました。朝まで働いて昼過ぎに起きてまた夕方からバイトに行って……、そんな生活を続けていたので当時は体が常に重いというか、ダルい感じでしたね。交感神経と副交感神経も逆転してしまっていたのか、自分を見失いそうになっていました」。
そんな日々のなか、25歳で出会ったのがヨガだった。友人から何気なく教えてもらったことがキッカケだったが、その友人以上に夢中になった。
「最初は見よう見まねですよね。ヨガスタジオに通うようなお金もなかったので、本やDVDを購入して独学で学びました。毎日反復していたので、内容も完全に暗記しちゃって」。
基本的に、ヨガはひとりで完結できる世界。これまでやってきたどの運動とも違い、自分のペースで体を動かせるのが心地良かった。日々の倦怠感から抜け出せずにいたが、ヨガを始めると心身ともに体が軽くなる感覚があった。
「体にいいのはもちろん、なにより気持ちが安定するんです。20代のときって周囲と自分を比べて焦ったり、無性に寂しさを感じたりすることがあるじゃないですか。でもヨガをやっているときは心のザワザワから解放されて、穏やかな自分でいられました」。
気付けばヨガは更科さんの生活になくてはならないものになっていた。仕事を終え、朝方に帰宅。ひと眠りしたあと、まだ日のあるうちにヨガで体のバランスを整えてから出勤することが日課となった。そうやってヨガを学ぶうちに興味を持ったのは、紀元前に起こったとされるインドの伝統的な八支則のヨーガ、アシュタンガヨガだった。
「それから4、5年経った頃でしょうか。ヨガの本場であるインドへ、旅に出たんです」。
聖地で鍛錬を積むべく、更科さんは30歳で単身インドへと飛び立った。
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