僕らのアウトドアアクティビティに欠かせないブランド、それがモンベルだ。三代目社長の辰野岳史氏は、創業者・辰野 勇氏の長男である。
いったいどんな社長なのか。それはとことん客のことを考え、とことん手を動かす社長だった。
Brand Profile
アイガー北壁日本人第二登を果たした辰野 勇、その山仲間の真崎文明、増尾幸子により1975年に設立。“Function is Beauty(機能美)”および“Light & Fast(軽量かつ迅速)”をコンセプトに製品開発を続けるアウトドアブランド。登山、キャンプ、自転車から農林漁業まで、さまざまなフィールドで使うウェアとギアを生産する。
モノ作りの起点はフィールドでの実体験
「創業者の辰野 勇(現会長)は1970年代のトップクライマーのひとり。ただその当時は、テントや寝袋、衣料といった登山用具は軍の払い下げ品などを使っていたそうです。満足できるモノがなかったことが、モンベル設立のきっかけなんです」。
そう言って当時の製品カタログを見せてくれたのは、2017年に代表取締役社長に就任した辰野岳史氏だ。モンベルの創業初期に作られた製品のひとつに、中空構造のダクロン繊維の中綿を採用した寝袋がある。軽く暖かく、コンパクトに収納できるこの寝袋は、化学繊維が「ダウンの代用素材」と思われていた時代に、イノベーションを起こした製品といえる。
「創業メンバーはモノ作りのプロではありませんでしたが、コトのプロフェッショナルでした。実際のフィールドで本当に必要な要素を追求。今も製品のアイデアは、そのほとんどが社内から上がってくるものなんですよ」。
モンベルには現在、登山、カヌー、サイクリング、キャンプなどさまざまなカテゴリーに精通した多くの社員がいる。彼らの実体験に基づくニーズが、製品に直結しているのだ。
「今は約4000アイテムの製品を作っています。売れる商品もあれば、それほど売れない商品もありますが(笑)。ただ、自分たちが必要だと思うモノは、そのアクティビティを楽しむ誰かにとって必ずプラスになる。コトを楽しむ助けになる。そう信じているんです」。
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