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大事なのは、“らしさ”や“味”がちゃんとあること

大鍛冶さんが代表取締役を務める「カーハート WIP」は、ご存知の通りアメリカをルーツに持つブランド。商品はどれもどこか武骨で、昔からずっと変わらない味わいを持つことが魅力。

「昔からあるペインターパンツにしろ、コートにしろ、今ではほかのブランドでも作られるアイテムですが、カーハートは100年くらい前から作ってきたものです。時代とともに、少しずつアップデートしていますが、現代化し過ぎないというか、オリジナリティを残しながら進化するブランドなんです」。



それはどこか、大鍛冶さんの車選びにも通じる気がする。昔からほかの何ものにも似ないオリジナリティがある。空気抵抗をなくして燃費を稼ぐという今どきの車のフォルムにはない、武骨さがある。ヴィンテージだから価値があるのではなく、長い歴史の中で培われてきた味が、それを手にする人を楽しませる。

車もどんどん新しくなって、電気自動車だ、自動ブレーキだと最先端機能が搭載されるのが当たり前になってきているけれど、その分いざ修理をしようとすると専用の機械が必要になる。



「その点ボクが乗っているような車って、今の車と比べたら遙かに構造が単純で、だからどこへ修理に持っていっても『どれ、どこが調子悪いの? あー、はいはい、なるほど』って。『この車種は久しぶりだなあ』なんてうれしそうに修理をしてくれます」。

確かに古い車って壊れますからね。「いや、言うほど壊れませんよ。人だって歳を取ったらいろいろ悪くなるじゃないですか。だいたい、そろそろかな、と思っている所が壊れるから困ることはあまりないです。妻とのドライブ中の故障は、さすがに怒られましたけどね(笑)」。

次に乗りたい車は決まっているのかとたずねると、車種は決めていないが常にアンテナは張っているという。「車を買いたいタイミングで、その時のアンテナにビビッとくるものがなくて断念することも多いんですが、友人から『好きそうな車が出てたよ』なんて連絡をもらう場合もたいてい、僕からすると程度が良すぎる。例え年季の入っている車でも、古い車なら内装までオリジナルのものがいい。できる限りオリジナルに近い状態のものを『さあ。どう乗ろうか』と考えるのが好きなんです」。



ヴィンテージだからって無駄に高いものは手にしない。自分が欲しいと思ったら創意工夫で乗り越える。

そうやって大切に走ることで車との会話を楽しむ。ドライブの行き先も気の向くまま。当日にテレビやネットで見つけた「美味しい食事ができるところ」を行き先に定め、愛車で走る。そんな行為自体が楽しく、大鍛冶さんにとっての癒やしなのだ。

カーハート WIPは、我々のようなど真ん中世代はもちろん、10代などの若い世代にも人気のブランド。その理由はもしかしたら、大鍛冶さんのクラブマン・エステートと同じように、世代を超えても変わらない唯一無二の“味わい”なのかもしれない。



鳥居健次郎=写真 籠島康弘=取材・文

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