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アシスト役が夢を叶えた瞬間

トップ集団の状況をマシューは冷静に分析をしていた。
「トップ集団には過去4回『パリ~ルーベ』で優勝している選手もいました。ただ、彼のほうが実力は上だけど、彼も含めて、ほかの選手はみんな疲れていると感じたです。ここで初めて、もしかしたらいけるんじゃないか、これは自分の夢なんだから行くっきゃない! と集中力が増したんです」。
最後までギリギリの攻防を繰り広げたマシュー自身、ゴール直後は優勝を信じることができなかった。映画でも「ローラー台でトレーニングをしていただけなのに!」と驚く姿が映し出されている。
「ほかの選手が毎日のように戦っていた5週間、僕はケガでレースから遠ざかっていたので、『パリ〜ルーベ』を走ることがすごく新鮮に感じられた。そういうメンタルで臨めたのが、勝利の理由じゃないかと思います」。
勝利のインタビューを受けるマシュー。表情から歓喜の様子が伺える。©MakotoAYANO/cyclowired.jp
30代後半ともなれば、体力の衰えを感じることも多々ある。それだけにベテランの快挙は、大きな刺激を与えてくれる。
「若いというのは素晴らしいし、エネルギッシュな時代はベストだったと思う。だけど、年をとってくるとエネルギーをコントロールできるようになってくる。今、何が大事で何を捨ててもいいか、取捨選択がうまくできるようになるのが“経験値”だと僕は思っています。
体力は落ちたとしても、年をとってからの方がレースに賢く臨めると思うし、若い選手や周囲からリスペクトされる経験値を持っていることも、ベテランのいいところです。
そして、そういうナレッジや経験値を若い世代に伝えていくということも大事だと思っています」。
多くの逆境を跳ね返して掴み取った栄冠は、年齢や状況に捉われず、自分の好きなことに対するパッションの大切さを教えてくれる。最後にマシューはこう言った。
「“Always keep riding”。常に走り続けろ、今でも僕は自分にそう言い聞かせているんです」。
映画『栄光のマイヨジョーヌ』
『栄光のマイヨジョーヌ』
2月28日(金)より新宿ピカデリー、なんばパークスほか、全国順次公開
公式サイト

林田順子=取材・文


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