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チームのためのアシスト役、という選択

オーストラリア出身のプロサイクリストは多いが、2012年までオーストラリアにはプロチームは存在せず、マシューはプロになるべく18歳でベルギーに渡った。2000年、20歳でオランダのチーム「ラボバンク(現ユンボ・ヴィスマ)」で念願のプロ入りを果たすと、その後、イギリスの「チーム・スカイ(現チーム・イネオス)」を経て、母国の「オリカ・グリーンエッジ」に入団する。
ベルギーにいるマシューへの取材はスカイプで行った。ピースサインで雰囲気をなごませてくれる。
「ラボバンクは、ハードワークが求められる、いかにも伝統的なヨーロッパのチーム。対してチーム・スカイはスポーツサイエンスやサイコロジストなど最先端の欧米式システムを取り入れていて、とても機能的でした。ところが、グリーンエッジはほかのトップチームとはまったくタイプが違う。エンターテインメントビジネスのオーナーが手掛けていることもあって、笑いあり、ジョークあり。オーストラリア人のユニークさを表現しているチームですね」。
マシューがこう言うように、オリカ・グリーンエッジのエンターテインメント戦略は革新的だった。
YouTubeに「Backstage Pass」というコーナーを開設し、レースの結果だけでなく、選手たちが口パクで歌う動画など、まさにバックステージなコンテンツを配信。結果が求められるシビアなツアー中でもお構いなく、ビデオは回され続けた。
オリカ・グリーンエッジのチャンネル内にある「バックステージパス」のコーナー。
「誰かがこんなダンスをしていたとか、こんなジョークを言っていたとか、ストイックなアスリートとしてではない姿を見てもらえることはすごく楽しかったね」。
ロードレースは個人競技である一方、チーム競技でもある。エースを優勝させるべく自分が風よけになったり、ドリンクや補給食を運ぶアシスト役は、チームには欠かせない存在であり、マシューはまさしく好アシストとしてチームに貢献した。
 


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