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早生まれの体力的ハンディは高校でチャラになる

ここでもう1点、お子さんの誕生日は当然ご存知だと思いますが、それがスポーツ活動に大きく影響するということを考えたことはありますか?
図3の折れ線グラフはプロ野球とサッカーJ1リーグの生まれ月別の選手数、およびプロ野球選手の生まれ月別タイトル獲得数を示したものです。
野球もサッカーも、プロ選手は同じ学年でも遅く生まれるに従って選手数が少ないことがわかります。何故でしょうか?
子供のスポーツ新常識
図3:プロ野球とサッカーJ1リーグの生まれ月別選手数および、プロ野球選手の生まれ月別タイトル獲得数。
子供の頃は、早生まれ(1〜3月生まれ)の子は遅生まれ子(特に4〜6月期)と比較して、約1年の年齢差がありますから、確かに体力面で劣るケースが多くあります。
しかし、そこで、「能力が低い」と勘違いして、「スポーツが苦手」だと思ってしまうのは早計です。幼少期の生まれ月による体力差は、高校あたりになると、ほぼなくなります。
にも関わらず、早生まれの子が幼少期に「まわりと比べて自分は体力が劣っている」と思ってしまい、スポーツが嫌いになって辞めてしまうケースがあるのは残念なことです。これは子供側の問題というより、親やコーチなどの大人側の問題でしょう。幼少期に体力低いのは、その子の本来の能力ではないことを理解し、「うまくできること」ではなく、「苦手なりにも少しずつできるようになっていること」を褒めてあげることが大切だと思います。
楽しんで続けていれば、いずれ遅生まれの子供に追いつける可能性もあるのですから。図3の棒グラフで、プロ野球でタイトルを取った選手の生まれ月を見てください。エリートの集まりであるプロの世界でタイトルを獲得するような選手は、早生まれの割合の方が高いのです。続けることで追いつき、将来逆転するケースも少なくない、ということを覚えておいてください。
将来、どんな種目に絞るとしても、子供たちの身体は大人の縮小版ではありません。いち早くスポーツ選手として仕上げるために、大人の一流選手がやっているトレーニングをやらせても、それは子供の身体にとって必要以上の負担となり、故障ばかりか「スポーツって楽しい!」という純粋な心を折ってしまうことにもつながりかねません。大人の焦りやエゴは、逆効果になりかねないことをどうか忘れないでください。
こんなデータもあります。成人男性600名程度を対象に調査した結果、年収が上がるほど、学生時代に運動部に所属していた割合が高いというものです。特に年収700万円以上になると、じつに5割以上の人たちが学生時代に運動部に所属していたという報告もあります。スーパーアスリートになれなかったとしても、長く、そして楽しくスポーツを続けられるような環境をつくってあげることは、子供たちの将来にとって、決して無駄なことではないと考えます。
桜井智野風=文
桐蔭横浜大学 教授。同大大学院スポーツ科学研究科長。運動生理学 博士。公益財団法人 日本陸上競技連盟 指導者育成委員会コミッティーディレクター。スポーツの強化策としては、「ジュニア世代と接する理解ある指導者や親を育てることが一番重要である」という考えのもと、ジュニア対象の指導者育成のために全国を飛び回っている。


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