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ミドルエイジクライシスの理由

平野啓一郎
「37歳」は平野さんに大きな解放感を与えた。
「気付けば父より8つも年上になっているんだから変な感じがしますけどね」。そう言って笑う。
その一方で、周囲では40代を境に精神的に不安定になったり、迷ったりする人の話を聞くことが増えたという。
「実際、作家の年譜やアーティストの創作活動の歴史を見ても、40歳前後っていうのは何か迷う時期というか。不調を感じたり創作活動をやめたり、バンド解散したり。僕は父の年齢を超えた開放感の方が強かったけど、周囲の人を見てミドルエイジクライシスとは何なのか考え始めました」。
30代後半から40代にかけて、ミドルエイジ男性が人生につまずきやすくなることには何か理由があるのだろうか。平野さんは自身の経験も踏まえてこう語る。
「20年ぐらい作家活動していると、10代、20代でやりたいと思っていたことは大体できてしまうんです。だからこの先どうするのか、次のステップに進む必要があるけどそれが見えずに行き詰まってしまう。デビューしてしばらくは、『書かないと辛い、吐き出さないと苦しい』くらいの思いで筆を走らせる時期がありますが、やっぱり20年かけて書き続けていくと満たされていってしまう部分はあるんですよね。だからその先を見据えなければならない」。


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