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2度目の転移で明快になった仕事観

だが、すべてが順調だったわけではない。2017年6月の時点で、金澤さんは2度目のがん転移が見つかっていた。前回同様に肝臓で、胆のうとつながる胆管の出口にあたる肝門部。
しかも、担当医の診断は「予後不良(治療後の経過や見通しがあまりよくない、という意味)」。この場合の「予後不良」とは、どんな意味なのか。
がん専門医の押川勝太郎医師が説明する。
「肝臓は半分以上を切除しても再生できます。しかし、重要血管と隣接する肝門部は切除が難しい。ですから、抗がん剤治療になります。要するに、治癒切除ができる肝臓転移と比べれば『予後不良』、見通しがあまりよくないという診断だと思います。ですが、肝門部への転移でも抗がん剤治療で、長期生存される方はいらっしゃいますよ」。
だが、当時の金澤さんの感想はより深刻なものだった。
「『予後不良』の言葉が、私には『3回目の転移もあるぞ』と感じられて、人生の終わり方をいよいよ考えなきゃいけないと、切迫した気持ちになりました。心の奥からふつふつと込み上げてきたのは、『金澤雄太という人間を、仕事を通して伝えたい、覚えていてほしい』という思いでした」。
仕事や生きる意味を自問自答した彼は、明快な仕事観にたどり着いた。
「私と会った人に、いい採用や転職になったと納得してもらえれば、それは私が生きた証しとして残りますから」。
相手が企業であれ人であれ、その課題を解決して役に立てる喜びや使命感。あるいは、社会とつながっているからこそ感じられる存在意義。
いずれも健康な人がノルマやストレスに負けると、見失いやすい仕事の醍醐味だ。がんを治療しながら働く人たちと私たちは本来、不足しがちなものを補い合える関係にある。人は往々にして失って初めて、その価値に気づくからだ。
金澤さんは、自宅での療養中も先の部内報を作り続け、1年間で8号を発行。2018年5月、彼は満を持して3度目の復職を迎える。


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