「元・温泉寺の跡地に建つモダン温泉宿」
〜べにや無何有(石川)〜
「次に案内する宿は、世界の一流のホテル・レストランで構成される“ルレ・エ・シャトー”に加盟している『べにや無何有(むかゆう)』。この世界的権威を持つ組織に入ることが許された日本会員はわずか11軒! その1軒がこちらです」。
石川さん曰く、この「無何有」の何がスゴイのかというと、石川県の西端という立地に理由があるそうだ。
「遡ること平安時代。今『無何有』が建っている場所には薬王院温泉寺というお寺があったんです。その本堂では、僧侶が温泉や薬草を使って治療を施していたという史実が残っています。元・温泉寺があった場所にある露付き温泉って歴史の重みを感じますよね」。
客室に付いているのは、開湯1300年の歴史を誇る名湯・山代温泉の源泉露天風呂。滑らかな肌触りの「美肌の湯」が楽しめる。山庭を眺めながら浸かれば、その美しさに心が洗われるようだ。
ちなみに“無何有”とは、中国の思想家・荘子が好んだ言葉で、“何もないこと”“無為であること”という意味。それにちなんだ全16席の客室は、無駄を省いたミニマルな設計が印象的だ。
ココの見どころはそれだけじゃない。施設内に設けられた「円庭施術院」で、この地の歴史に縁を感じた女将が始めた、温泉と薬草を使った薬師山トリートメントのスパも必見である。
「まずは『美肌の湯』と呼ばれる温泉に入り、体を充分に温めてから施術スタート。マッサージで体をほぐし、そのあと、ひとりひとりの体質や体調にあわせてオーダーメイドされた薬草玉と漢方クリームを使い、トリートメントを行います。蒸しあげた薬草玉を体に押し当てたり、漢方クリームを塗ることで、薬草の成分が体内に吸収され、冷えや疲れを癒し体調を整えると言われているんです」。
なるほど。古来と同じ場所で行う現代の技術を活用した施術か。歴史のロマンも感じられていいじゃないか。男の冷えた体にも効きそうだ。
温泉とともに、平安から続く時の流れに身を委ね、今をまったり過ごすひととき。ココでしか得られない満足があるに違いない。
べにや無何有住所:石川県加賀市山代温泉55-1-3電話番号:0120-07-1340露付き宿泊料:7万3304円~ ※2名1泊2食付予約はコチラ 岡本卓大=写真 北村康行=文