癒やしのインテリアとして昔から愛好者の多いグリーンだが、最近はとりわけ多肉植物にハマる人が増えている。なぜモンステラじゃなく多肉なの?
コアフリークが集う老舗「鶴仙園」にてその魅力にどっぷりハマったというお三方に話を聞いてきた。
多肉植物にハマる3人
[左]遠藤泰信さん「園芸には終わりがないから楽しい」1976年生まれ。ファッション業界を経て、現在は横浜の港湾に勤務。多肉植物歴5年目で、現在80鉢ほどを育てている。「子どもたちも率先して手伝ってくれますし、仕事中に花が咲いたりすると奥さんが写メで教えてくれるんです」と幸せなグリーンライフを漫喫中。
[中]靍岡秀明さん「正解がないから難しいしオモシロイ」1972年生まれ。ヒデさんの愛称で顧客から慕われる、鶴仙園の3代目。サーフィンや釣りも趣味に持ち、駒込の本店には“世界一小さな”サーフショップも併設。著書に『これでうまくいく! よく育つ多肉植物BOOK』(主婦の友社)、『ハオルチア』(NHK出版)がある。
[右]山野井大輔さん「枯らしちゃうと本気でヘコみますよね」1978年生まれ。多肉植物歴7年目。広告代理店に勤務し忙しい毎日を送りながら、現在、自宅のベランダや屋上で250鉢ほどを育てている。「普通に暮らしていては絶対に出会えないような植物と触れ合えるのが楽しいですね。鶴仙園にはよく通っています」。
多肉植物が今、趣味に情熱を注ぐ大人たちの間で人気だ。雨の少ない過酷な環境に適応するべく、葉や茎、根の一部などに水分をたっぷり蓄えられるよう進化したといわれる多肉植物の魅力としてファンが口を揃えるのは、容姿の面白さ。話を聞いた3人も、奇想天外なその顔に衝撃を受けて虜になったという。当然、三者三様に“好み”がある。
「ハオルチアの透明な部分、透き通る窓がきれいでのめり込みました。種と種を掛け合わせてオリジナルを作るのも楽しい」と話すのは、多肉植物の専門店「鶴仙園」店主の靍岡さん。店に通う山野井さんは「木のような見た目の灌木系といわれるジャンルが好き。針金を入れてカタチを整えたり、盆栽のような楽しさもあるんですよ」と言い、同じく常連の遠藤さんは、ずんぐりむっくりした幹を持つ「パキポディウムは、もう何本育てたかわかりませんが、それぞれ顔が違うので飽きない」と魅力を語る。
そして皆が一様に「楽しい!」と言うのが、植物の世話だ。多肉植物は雨季と乾季がはっきりした地域で育つため水を体内に溜め込めるのだが、一方で「それぞれに適した気温や日照、成育期があるので、その植物に適した環境を作ってあげないとうまく育たない。風通しも大事です」と靍岡さん。多肉植物は春から秋にかけては屋外に出して育てるのが基本で、雨が降りそうなら部屋に入れるなど、天候へ常に気を配る必要がある。その付き合い方は、観葉植物というよりもペットに近い。大変だが、愛情を注げばうれしいお返しが待っていることも。
「朝起きてサボテンの花が咲いていたりすると、ホントうれしくて。会社に行く前にじっくり眺めます。夜戻ってくるとしぼんでしまっていることもあるので」と言うのは山野井さん。
遠藤さんも「多肉植物を育て始めてから朝起きるのが早くなりました。見たくて仕方がないですよね」と話す。夜にビールを飲みながら眺めていると、それだけで癒やされるとも。
また多肉植物の意外な恩恵について、遠藤さんは次のように語る。「育て始めてからというもの、家族との会話が増えました。雨が降りそうだから部屋に入れておいて、なんて些細なお願いが会話のきっかけになったりして。最近は子供たちもそれぞれの鉢を持って育てています」。
インスタでつながった多肉植物好き同士の交流も多く、山野井さん、遠藤さんもオフ会で知り合ったという。「お客さんを見ていて思うけれど、植物好きな人ってイイ人が多いですよ。なぜかサーフィン好きも多い」とは靍岡さんの経験則だ。今、この記事を読んでいるアナタもそのひとり。多肉植物のある暮らし、始めましょうよ。絶対に向いているから。
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