ブランドが買収されても何も変わることはない
ブランドを築いたステファノは’72年に他界し、息子のアルダヴァストが後を継ぐ。創業時の工房は近代的な工場となった。’80〜’90年代には素材、カラー、ライニングや金具類を変更するいわゆるカスタムオーダーのサービスも開始。そして2000年代には、世界中の有名百貨店でセラピアンが販売されるようになった。
さてリシュモングループ(※2)がブランドを買収し、コルテシ氏がCEOに就任したのは’17年のこと。就任当時、彼はブランドをどのようにディレクションし、どんな方向に導こうと考えたのか。
「ミラノ本店のリニューアルや新社屋“ヴィッラ・モーツァルト”のオープンなど、ブランドの世界観を伝えるための実務は多数こなしてきました。でも、それはとても簡単なことだったんです。ブランドには既に歴史と、ストーリーと、技術がある。初めてセラピアンのコレクションを見たとき、“本物の宝はもう手元にある”と思いました。私の役割はブランドのDNAをキープして、いかに伝えていくかだけだったんです」。
来る2月19日(水)〜3月3日(火)まで、ギンザシックス2階でポップアップストアがオープン。来日した職人による「モザイコ」の実演も予定されている。そのバッグを手に取り、ミラノで育まれた手仕事の粋を感じてほしい。
※1 ドゥオーモ
ミラノの中心部、同名の広場に位置するカトリックの大聖堂。ミラノ大聖堂とも呼ばれている。1813年に完成。以来戦火を免れながら、ミラノのシンボルとして親しまれ続けている。
※2 リシュモングループ
カルティエ、モンブラン、ダンヒルなど、数多くのラグジュアリーブランドを傘下に置く巨大企業グループ。スイスのジュネーブに本社がある。セラピアンは2017年に傘下に入った。
鈴木泰之(静物)=写真 加瀬友重=編集・文