音楽メディアの中心がCDからネット配信に変わりつつあるこの時代に、ローテクの極致たるレコードにまた注目が集まっている。それも、単なる懐古主義ではなく、新しいクールなトピックとして、というから面白い。
長年DJとして活躍している真柄尚武さんに聞いた、2020年、アナログレコードのススメ。
若年層でアナログ復権
──最近、「レコード人気、再燃」というような謳い文句が世に増えた気がするんですが、真柄さんにそういった実感はありますか?真柄尚武さん(以下真柄) そうですね。アナログレコードをリアルタイムで経験していない、ネット配信に慣れた若い世代のミュージシャンがあえてアナログ盤をリリースしていたり、DJの現場でも意識的にアナログでプレイする人がまた目立つようになりましたね。
例えばこの
ワングラム(1〜3)というバンドはディスコレゲエのようなサウンドで世界的に注目されてきているんですが、ボーカルの女の子はまだ20代。だけど、積極的に7インチのレコードをリリースしていて。アナログに重きを置いているのが伝わってきますよね。
キーワードは「山下達郎」
──なるほど。またレコードが注目されるようになったのには、何かきっかけがあったんですか?真柄 理由はいろいろあると思うんですが、
山下達郎さんの存在はひとつ、大きいと思います。彼は昔からレコード愛を公言していて、今の若い子で、センスのいい人たちがこぞって彼のラジオ番組を聴いてたりするんですよ。
日本だけじゃなく海外でも、タイラー・ザ・クリエイターがサンプリングしたりしてましたしね。例えばブックオフなんかに行って、山下達郎さんのレコードがあったら買っておいて損はしないと思います(笑)。
『RIDE ON TIME』(4)みたいに当時から人気の曲は意外と見つかりやすいし、お手頃ですし。逆に、
『Windy Lady』(6)なんかはかなり稀少で高騰しています。
──人気曲のほうがリーズナブル?真柄 人気曲は流通量が多いですからね。その点、『Windy Lady』の7インチはかなりレア。以前彼のライブで、「当時、(この曲を収録した)ファーストアルバムはまったく売れなくて不遇の時代だったから、国内外で評価されてるのはうれしいというか不思議な感じだ……」というようなことをご本人がおっしゃっていました。
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