オトーチャンズは背中と本棚で語るべし
生活習慣しかり、食事マナーしかり。親が理想とする子供の姿があるならば、口先だけでなく自らが実際にやって示すべきだ。しかし、それは子供に読書している姿を見せることに限らない。どうせ子供と一緒にいられる時間を使うなら、子供が相手してくれているうちに遊んでもらえと言いたいぐらいである。
そこで提案したいのが、子供の本棚とは明確に分けられた「オトーチャンズの本棚」を作ることである。「自分の本棚くらい、すでにある」と言うかもしれないが、たぶんそれとは意図するところが違う。このオトーチャンズの本棚は、子供に見せることを主眼とした本棚であり、間接的な読書アピールスポットだ。
もちろん、そんな主眼は子供に伏せておき、「勝手に見てはいけない」くらいの雰囲気を漂わせておくのがポイントである。見るなと言われれば気になるもの。そうやって子供の好奇心、探究心を醸成しつつ、より本への興味を高めさせることを意識した“品揃え”を意識したい。父親の背中を見て子供は育つというが、オトーチャンズには子供が見て本への興味が湧く、そんな本棚作りにチャレンジしてみてもらいたい。
親として自ら読んでほしいとは言えないが、世の中の汚い部分も子供のうちからチラ見くらいはしておいてほしいものだ。そんな教育的でない(つまり性的、暴力的な)本をあえて置いておくのも、子供の成長度合いや秘められた特性を垣間見ることができるならナシではないだろう。言うまでもないが、あまりにハードなやつはベッドの下なりにしっかり隠しておくべし。
子供を本好きにしたいならば、なによりも彼らの「読みたい」と思う気持ちを盛り上げるための工夫をすべきだろう。それには実際に足を運び、現物を手にとるなど、モニター越しの視覚情報だけに頼らない五感すべてを使った経験が良いと考える。
かつて、知識偏重主義、教養主義のアンチとして「書を捨てよ、町へ出よう」のフレーズがもてはやされた。しかし、令和のオヤジ、オトーチャンズが実践すべきは子供の手を引き「書に触れよ、町へ出よう」なのである。
>連載「オトーチャンズの心得」を最初から読む宇都宮大洋=文 asacom.=イラスト