鈴木の成長秘話が僕らに教えてくれるもの
2015年に引退した鈴木氏は、アスリートの腸内環境の解析を手掛けるスタートアップ「AuB株式会社」を設立。500人以上のトップアスリートの便を集めて腸内細菌の研究を進めるとともに、コンディショニングサポート事業やフードテック事業などを展開している。
つい先日、人の健康に効果的な腸内細菌を摂取できるフードテック商品の第一弾をクラウドファンディングを活用して先行予約を行ったところ、1000人以上の支援者を集め、906%の目標達成率を獲得するなど、その成長は止まることを知らない。
引退後も新しい挑戦をし、成長を続ける鈴木啓太。僕らにも子供時代があった。あの頃はいろんなことに興味を持ち、出来ないことにたくさんトライしてきた。算数の問題だって、逆上がりだって、最初は出来なかったことが、何かのきっかけで出来るようになったときは、きっと楽しいと感じたはずだ。それが大人になって、年齢を重ねるうちに、成長が鈍化するどころか、自分の成長を感じる機会も少なくなってきた。
だが、鈴木は、「楽しむ」ことによって、子供の頃に感じた成長を実感することができたと言うのだ。鈴木が成長し始めた30歳といえば、アスリートの世界ではすでに体力的なピークは超え、キャリアの晩年に差し掛かる時期だ。サラリーマンでいえば、定年間際といっても過言ではないだろう。そんな時期に、たった一人の男の言葉によって、さらなる成長を遂げた鈴木の成長秘話は、僕らに勇気を与えてくれる。人間の持つ能力は、大人の秘めたポテンシャルは、まだまだ捨てたものじゃないと教えてくれるのだ。
鈴木 啓太(すずき けいた)プロフィール1981年生まれ。静岡県出身。2000年、東海大翔洋高から当時J2に所属していた浦和レッズに加入。2002年にはレギュラーに定着。その後は2006年、2007年と2年連続でJリーグベストイレブンに選出されるなど、中心選手としてチームの黄金時代を築き上げた。名将、イビチャ・オシムに見出され、2006年には日本代表入り。オシム・ジャパンの中核として活躍した。不整脈を発症し2015年に現役を引退。J1通算379試合、国際Aマッチ28試合に出場。引退後は、アスリートの腸内環境の解析を手掛けるスタートアップ「AuB株式会社」の代表取締役社長として、アスリートの腸内細菌の研究開発を進めている。
瀬川泰祐=取材・文・写真