OCEANS

SHARE

中1でクラッシュしたときのトラウマは今も残ってます

−−BMXを辞めようと思ったことはないんですか?
中村 コケて痛いとか、しんどいとかはありますけど、辞めたいと思ったことはないですね。
−−トリックの練習でいちばん辛かったのはどんなものでしたか?

中村 う〜ん。「フレア」っていう技があるんですけど、僕は小学校6年生くらいのときに初めてできたんです。でも、中1のときにその技をやってクラッシュしてから怖くなってしまって。今はもちろんできるんですけど、今でもコケたときのトラウマは残ってますね。忘れようと思っても忘れられないんです。でも、それもあまりひどい怪我ではなかったですし、今までも骨折とかはしたことがないので、僕は珍しいほうですね。
−−格好良さ、面白さにばかり目が行きがちですけど、やっぱりリスクも伴う競技ですもんね。
中村 怪我をしてしまうこともあるし、危険な部分もありますよね。でも基本は子供でも大人でもできるし、親子で楽しめる競技だと思っています。
−−観戦する側の視点で、BMXの面白さはどんなところだと思いますか?
中村 自転車っていう道具がデカいので、ダイナミックに見えるところかなぁ。あとはライダーそれぞれ、技が全然違うのでそこにも個性を感じられると思います。自分のスタイルを出せるんです。今日のイベントにも参加してくれた高木君だったらフロントフリップだったり、勅使河原君(※高木聖雄、勅使河原大地。両名とも、VANSにスポンサードされるプロBMXライダー)だったらスーパーマンみたいにシートを掴む技だったり。誰も技がかぶったりしないので、個性が出るところが良いところかなと思います。

−−サーファーやスケーターでも、スタイルを重んじる人だったり競技性の強い人だったり、いろいろな方がいますよね。
中村 分かれますね。ただ、僕は分けたくないんです。やっぱり両方できたほうが格好いいと思うんです。まぁ、オリンピックがあるので今はパーク競技にフォーカスしているんですけど、自分の場合はどっち、というわけではないんですよ。両方大切だし、分けちゃうのはもったいないと思うんです。僕は、もちろん自分が楽しいからBMXをやっているんですけど、その楽しさをいろんな人たちに共感してほしいなと思ってます。
3/3

盛り上がりは映像だと伝わりきらない。現場が命だなと思っています

−−2020年、中村さんが競技で盛り込もうとしているトリックや、注目すべき部分を教えて下さい。
中村 実際にやるトリックは、会場が特設だとそこに行って見るまでわからないんですよ。だから、いつも何をやるかが決まるのはギリギリなんです。ただ、僕はジャンプの高さにはずっとこだわってきたので、そこはやっぱり注目してほしいところのひとつですね。
−−そういう意味でも競技自体のライブ性はすごく強いですね。画面越しに観るBMXと、生で観るBMXの違いはどんなところですか?

中村 やっぱりいちばんは迫力ですね。映像でももちろん「すごいね!」とはなるんですけど、お客さんの盛り上がりなんかは映像だとなかなか伝わりきらないので。だから、現場が命だなって思いますね。
−−そういうお客さんの盛り上がりは、競技の最中でもわかるものですか?
中村 ハッキリわかりますよ。だから、観てくれてるお客さんの声はすごく大事なんです。60秒間走って1発目の大技を狙って、それがキマって歓声が上がると、そこからどんどん調子が上がっていったり。
−−そういう意味では、観ている人たちも競技に参加しているような部分があるのかもしれないですね。
中村 そうですね。乗っているほうも観ているほうも最高に楽しめると思います。海外の大会なんかに出ると、僕たちはすぐにテンションが上がっちゃって無茶をしちゃうことも多いんですが(笑)、そういう意味では今回のオリンピックは日本での開催だからすごくいいコンディションで行けると思うし、何よりパワーをもらえるので。僕は練習を頑張るので、皆さんには是非盛り上がってほしいなって、そう思っています。

“車輪”と“五輪”、そこに夢を見る。17年前に生まれ落ちたとき、彼の名には、BMXを愛し続けた父のそんな想いが込められた。そして2020年、それはついに現実になろうとしている。
彼の2020年は、きっと日本の2020年を、もっと楽しくしてくれるに違いない。
 
山本 大=写真 今野 塁=文

SHARE