盛り上がりは映像だと伝わりきらない。現場が命だなと思っています
−−2020年、中村さんが競技で盛り込もうとしているトリックや、注目すべき部分を教えて下さい。中村 実際にやるトリックは、会場が特設だとそこに行って見るまでわからないんですよ。だから、いつも何をやるかが決まるのはギリギリなんです。ただ、僕はジャンプの高さにはずっとこだわってきたので、そこはやっぱり注目してほしいところのひとつですね。
−−そういう意味でも競技自体のライブ性はすごく強いですね。画面越しに観るBMXと、生で観るBMXの違いはどんなところですか?中村 やっぱりいちばんは迫力ですね。映像でももちろん「すごいね!」とはなるんですけど、お客さんの盛り上がりなんかは映像だとなかなか伝わりきらないので。だから、現場が命だなって思いますね。
−−そういうお客さんの盛り上がりは、競技の最中でもわかるものですか?中村 ハッキリわかりますよ。だから、観てくれてるお客さんの声はすごく大事なんです。60秒間走って1発目の大技を狙って、それがキマって歓声が上がると、そこからどんどん調子が上がっていったり。
−−そういう意味では、観ている人たちも競技に参加しているような部分があるのかもしれないですね。中村 そうですね。乗っているほうも観ているほうも最高に楽しめると思います。海外の大会なんかに出ると、僕たちはすぐにテンションが上がっちゃって無茶をしちゃうことも多いんですが(笑)、そういう意味では今回のオリンピックは日本での開催だからすごくいいコンディションで行けると思うし、何よりパワーをもらえるので。僕は練習を頑張るので、皆さんには是非盛り上がってほしいなって、そう思っています。
“車輪”と“五輪”、そこに夢を見る。17年前に生まれ落ちたとき、彼の名には、BMXを愛し続けた父のそんな想いが込められた。そして2020年、それはついに現実になろうとしている。
彼の2020年は、きっと日本の2020年を、もっと楽しくしてくれるに違いない。
山本 大=写真 今野 塁=文