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なくなりつつあるモノへの憧憬

――“残らなくなる”といえば、佐藤さんは「奇界遺産」に代表されるように、じきになくなってしまいそうな場所をよく撮影されていますよね。それはなぜですか? ある種のノスタルジー、ですか?
佐藤 ノスタルジーとは少し違うんですが、その存在がなくなる前に撮りたい、という思いは少なからずあります。自分が過去の写真を見たときに、’70年代、’80年代の写真に対して「悔しいな」と思うことがよくあるんですよ。
一同 なるほど。

佐藤 今は、もう存在しない。ということは、撮りたくても撮れないわけですよね。その時代、その瞬間でしか撮れないモノを、かつての写真家は撮影してきた。だから自分もそうあるべきというか、思い立った瞬間に撮りにいかないといけないとは常々思ってます。さらに言えば、これから出てくる新しい写真家に誇れるものがあるとすれば、結局、現在この時代を撮っている、ということしかないと思う。逆にいえば、未来のものは彼らにしか撮れないからこそ、そう思うんですけど。
藤井 その意味で言うとノンネイティブは、そういう人たちが買いたいと思ったときに、常にそこに用意されているイメージ。長く愛して欲しい。サステイナブルとか言われますけど、あれって捨てなければいいだけの話。ブランドや服への愛着があればこそ、物持ちもよくなるわけですから。
佐藤 そうなると、新たな購買意欲を持たせるのって難しくないですか?

藤井 そのとおり。だからウチは定番的に作っているモノも多いんです。そして、この「デナリジャケット」じゃないですけれど、細かくディテールを進化させてさりげなく物欲を刺激しつつ……演歌のように地道にやっています(笑)。
佐藤 そういう真摯なモノづくりに惹かれてしまうんですよね。


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