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匿名的であることの正義

佐藤 現実問題として、旅に出るときは荷物を多くしたくないという理由もあります。街用とフィールド用と別々に用意するとかさばりますからね。あと、「それっぽい」格好がそれほど好きじゃないんです。
藤井 なるほど。ベタなやつね。

佐藤 バックパッカーって、なんか「バックパッカー然」としているじゃないですか。アウトドア人もそう。色味が強かったり。
藤井 エマージェンシーカラーとかクレイジーパターンとか。
佐藤 それが悪い、というより、ティピカルに見えるのが嫌というか。バックパッカーでもアウトドアでも、何かのカルチャーに乗っかった人が無意識的にコスプレしちゃう感じが嫌なんです。やってることも行く場所も関係なく、いつもニュートラルでいたいし、日常の延長線上で旅に出て、そのまま帰ってくるというのが理想なんですよね。
藤井 健寿くんの中では旅と日常が別れてないんだ。そういう目線で見たときに、ノンネイティブの服ってどう映りますか?
佐藤 まず、高機能ですね。
藤井 機能を言われるのはうれしいですね。僕らもクリエイティブのために旅に出たり、結構ハードな環境に身を置くことがあります。そういうときは、本格アウトドアウェアほどでなくても機能的な服を着たい。だから、アウトドアブランドが持っていないファッションの要素を、僕らはコラボレーションすることで加えている。「デナリジャケット」はまさにそう。リアルに必要な機能は、最先端から70%程度でも十分なんですよ。その代わり、都会にそのまま戻って来られることが大事。
佐藤さんがこの日履いていたhoboとダナーのコラボブーツ。
佐藤さんがこの日履いていたのは、hoboとダナーのコラボブーツ。「シューレースがゴムで着脱がスゴくラク」。
佐藤 まさにその感覚です。機能優先で選んでも、結果的に見た目も良いからラクなんです。ノンネイティブは、ほかのブランドみたいにブランドのロゴがガッツリ入っているわけではないし、ファッション業界の玄人も唸らせるのに、素人が見ても格好いいと思わせる普遍性がある。そういうマニアックな部分と、考えずに着られる着やすさのバランスが、自分のライフスタイルにマッチしています。
――そういう人ほど、自分の服選びのタネって明かしたがらないですよね。
佐藤 そうなんです。ファッションで注目されるのも恥ずかしいから、普段あんまりどのブランド着てるとかいちいち言わないんですけど。だから、今回の取材受けるのためらいました(笑)。
藤井 ついにバレちゃったね(笑)。


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