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自分のように“箱根で終わるランナー”になってほしくない

前田康弘
箱根駅伝を優勝に導いた駒澤大学のキャプテンとして、メディアに華々しく取りあげられた時期が終わり、卒業後は富士通で実業団ランナーとして走り始めた前田さん。しかし前田さんにとって、実業団での時間は決して平坦なものではなかった。
「箱根駅伝にすべての目標設定を置いていた自分は、実業団に入ったあと個人種目で世界を……というモチベーションに至らなかった。あの優勝が自分のすべてになってしまっていたから、プロとしての覚悟が持てていなかったんです」。
だからこそ、現在、指導者としての前田さんは教え子に「箱根の先を見据える指導」を徹底しているという。
「当時よく言われていた“箱根の燃え尽き症候群”。自分はまさにそれでした。だから教え子には自分のような『箱根で終わるランナー』には絶対になってほしくない。箱根を終えたあとの競技人生をどのように過ごすかを意識して過ごすように生徒には指導しています」。
実業団ランナーとして過ごした時代は数年で幕を閉じた。そして20代後半、普通のサラリーマンとしての新たな人生がスタートした。
「駒大時代の恩師である大八木監督には『競技者を引退します』と伝えにいきました。そうしたら『じゃあお前、明日からグラウンドに来い』と言われて、駒大のコーチとして手伝うことになったんです」。
平日はサラリーマン、休日は指導者としての生活が始まった。


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