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――今はニューヨークを拠点に、世界各地で落語をされています。カナダ出身のサンシャインさんが、ニューヨークで落語をすることは、どう受け止められていますか。
日本人は、例えば外国人が適当に着物を着ても、「興味を持ってくれてありがたい」と寛大ですが、アメリカ社会では、相手の文化を安易に盗むことを「cultural appropriation(文化の盗用)」と表現し、問題視します。ですから、私はマクラ(落語の本題に入る前の小噺)で、「落語は、修行が必要な芸術だ」ということを話しています。そうでないと、「ただ、外国人が着物を着て、適当に話している」と思われますから。
僕の落語については、ニューヨーク・タイムズや『ニューヨーカー』などのメディアが、「これはcultural appropriationではない」と評してくれています。つまり「日本の伝統芸をきちんとマスターしている本物だ」と理解してもらえているわけです。
――落語の笑いは、ニューヨーカーにもウケるのでしょうか。
僕のお客さんは、白人、黒人、スペイン系など、95%が日本人以外です。古典については、英語に翻訳しただけですが、みなさん大爆笑です。たとえストーリーの舞台は日本でも、夫婦げんかや、憎めない泥棒の笑い話など、コアとなるユーモアは世界共通ですね。
落語の笑いはね、すごく柔らかいのです。西欧の古典は、善良な王子と悪役の魔女が戦ったりしますが、落語には本当の悪人が出てきません。ちょっと抜けた人は出てきますけれどね。また、落語には、「悪いやつは殺されるから、いい子でいるように」みたいな大人目線の教訓もなく、これは世界的にみても珍しいと思います。
政治、宗教で人を分けるのではなく、バックグラウンドの違う人間が一緒になって笑えるのもいいですね。とくに最近のアメリカは、トランプかクリントンか、白か黒かと、二極化・対立化しているので、落語的な笑いが必要とされているのかもしれません。
 

落語はブロードウェイでも通用すると確信

――2019年9月から、ブロードウェイでパフォーマンスをされています。「落語でブロードウェイに出る」という発想は、日本人にはなかった気がします。
ないでしょうね。僕は、6年前から「いける!」と。2013年にカナダのウィンター・ガーデン劇場で落語を披露したのですが、そのときは、僕の弟が中心となって、カナダ人相手に、50ドルのチケットを1000枚売ってくれました。カナダのビジネスマンたちが、みなさん大爆笑。このときに、「ブロードウェイでも通用する!」と確信したのです。実はブロードウェイの公演は、当初3カ月半の契約でしたが、つい先日、来年4月までの延長が決まったところです。
――落語の可能性を感じますね。
ブロードウェイで認められたら、落語の歴史が変わります。僕がブロードウェイで演じるのは、日本のデパートが赤字覚悟で銀座に本店を出すのと同じで、ブランディングに対する投資です。僕は、日本の落語をブランディングして、世界のマーケットに進出することがイメージできています。ブロードウェイに出るための資金は、日本の方々に投資していただいているので、恩返ししたいですね。


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