――日本人はゼロから生み出すことが苦手なのでしょうか。そんなことはないですよ。僕が日本に来た頃、原宿ではガングロメイクとルーズソックスがはやっていて、感動しました。あんなファッションは、パリにもニューヨークにもありません。どう考えても日本のオリジナルですよ。ガングロの女の子を彼女にしたいかどうかは別ですけれどね(笑)。日本のマンガは世界中で人気がありますし、コスプレも日本発じゃないですか。
とりあえず謝る日本人の気遣い
――いわゆる「日本人気質」とは?思いやり、気遣い、「自分が自分が」と前に出ない控えめなところ、オーガナイズされているところ、まずは謝るところ……。
――まずは謝る……?僕が、「G20大阪サミット2019」のレセプションで司会を務めることになって、大阪に出張したときの話です。関西国際空港に降り立ったら、各国語で「G20開催のため、ご迷惑をおかけして恐縮です」という趣旨のことが大きく書いてあって、「すばらしいな」と思いましたね。まだ何も起きていないのに、謝っているのですから。
確かに、入国審査には300人ぐらいの列ができていましたが、職員も通常の何倍も配置されていて、結局10分で順番がきました。それなのに、ブースの税関職員は、僕の指紋や写真を撮りながら「えらいお待たせして、すんませんね。G20なんで」とまた謝ってくれるのです。まったく待ってないのに!
その後、空港内のコンビニから宅配便を送ろうとしたら、店員さんが「G20ですから数日かかるかもしれません。すみません」とまた謝ってくれて、結局、翌日ちゃんと届いていました。まず謝って、そのうえでベストを尽くすって、すごいこと。まあ、大阪の方々、とりあえず「G20です」と言いたかったのかもしれませんけれどね(笑)。
仕事を終えてニューヨークの空港に戻ったら、G20でもないのに入国審査に90分待たされ、誰も謝らないし、急ぎもしない。アメリカが野蛮な国に思えましたね。あ、もちろん、アメリカも好きですけれどね。
――落語との出会いは?日本に行って5年後です。横浜の焼鳥屋で開かれた落語会で、若手噺家の落語を聞いて、「すばらしい芸に出会ってしまった」と衝撃を受けましたね。私の人生が変わった瞬間です。すぐに「これやりたい!」と。焼鳥屋のマスターには、「落語は修行が大変だし、君は外国人だし」と反対されましたけれど、意志は変わりませんでしたね。約3年後の2008年に、桂三枝(現:六代桂文枝)に弟子入りしました。
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