持てる技術を注ぎ込んだメカニカルな作り込み、ステイタスの象徴……。いつの時代も大人の嗜みとして並んで語られるのが腕時計と車だ。
今回は、“日本一メルセデス・ベンツを売る男”と呼ばれた伝説の営業マンを直撃。高級車販売の最前線で活躍し続けた彼に、腕時計の魅力を語ってもらった。
「いい時計をしていれば信頼感を得られるでしょうし、仲間意識も生まれます」
男心をくすぐる。その点において、腕時計と車には抗えない魅力がある。
「メカニカルな部分に惹かれるのは、やはり男のサガでしょうね」。そう語る吉田満さんのコレクションを見れば、確かに納得させられる。「流行りではなく、自分の琴線に触れるものを選びます」というラインナップは、複雑機構を載せた機械式がズラリ。
針が回転せず反復運動するレトログラード機構が特に好みだそうで、「車のメーターの動きに近いですよね」と補足してくれた。
車のセールスシーンでも、時計が話題に上るという。「車の話は10分くらいしかしません(笑)。わたしのお客様は純粋に時計が好きな方が多いですし、観察眼が鋭く、要求も高い。いい時計をしていれば信頼感を得られるでしょうし、仲間意識も生まれます」とにっこり。
ビジネスにおいては、華美になりすぎず、シンプルで上品なデザインの時計を選ぶそうだ。まずは仕事のツールとして時計の力を借りる。また、吉田さんのオンとオフを切り替えるスイッチも時計が担っている。
「サーフィンが好きで。仕事を終えて週末海に向かうときには、ロレックスを巻くんですが、心がほぐれるのを感じるんです」。吉田さんにとって、時計とは“戦友”であり、“遊び仲間”なのだ。
※本文中における素材の略称は以下のとおり。K18=18金、WG=ホワイトゴールド
渡辺修身=写真 柴田 充、髙村将司、増山直樹、渋谷康人=文