Watchの群像劇●ひと口に腕時計といっても十本十色の顔がある。それは歴史や外観、機構など多くの構成要素が複雑に絡み合うことで1本の腕時計が作られるからだ。本連載では腕時計が持っているさまざまな魅力を3つの視点からスポットライトを当てて紹介する。
今月の主役は「レトロなダイバーズウォッチ」。今も絶えず進化を続けるダイバーズだが、情緒や風情を閉じ込めたその佇まいに惹かれる。ここには登場する時計が繰り広げる群像劇がある。
Chapter 1 腕時計とファッション腕時計はただそれだけでも美しい。しかし、それは腕に着けて初めて本来の存在感を主張する。そしてファッションとセッションすることで初めて自分らしく着けこなせるのだ。
TUDOR
チューダー/ブラックベイ P01
チューダーは、1950年代以降アメリカ海軍にダイバーズウォッチを納品してきた実績から、その後継機として’67年にプロトタイプを開発した。コードネームは「コマンドー」。だが定番化されることなく、マニアの間では“幻の時計”と呼ばれていた。これが半世紀を経て、現代に甦った。
ラグ部分を覆う特徴的なカバーは、元はベゼルの分解メンテナンスをしやすくするための仕様だったが、この上部を引き起こし、回転ベゼルのロック機構に置き換えた。4時位置のリュウズや風合いの漂うレザーとラバーを使用したストラップも当時のスタイルをリアルに再現する。
ミリタリーのDNAを秘めた
ダウンジャケットと腕時計との共演
軽くて暖かいダウンジャケットにスウェットパンツ。そんな着こなしに馴染むのが、チューダーの「ブラックベイ P01」だ。
軍用時計という出自を踏まえて、今回主役に選んでみたのはストーンアイランドのオリーブグリーンのダウン。気取らず、気負わず、肩肘張らずに身に着けられる。まさに日常に溶け込むようなタイムピースといえるだろう。
※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール
川田有二=写真 菊池陽之介、石川英治=スタイリング yoboon(coccina)=ヘアメイク 柴田 充=文