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純真な若者ほど怒りは増大する

もう私のような世を拗ねて生きているアラフィフのおじさんは、こんなことには慣れてしまいました。しかし、世に出たばかりの若者は純真です。上司がマウンティングするために出てきた言葉に対して「あ、ああ、O、OODAですよね……あれですよね」とか、定義の間違いを指摘されやしないかとビクビクしながら上司との会話をやり過ごします。
そして一生懸命調べても、新語でメシを食っている人たちは明快な答えをくれない(明快にすると新しくないのがバレるので)。そのうち、本質がわかっている人に出会って「ああ、あれ、ほぼ一緒」と言われたとしたら……その怒りは想像すると恐ろしいです。

ふつうの言葉しか使わない人のほうがリスペクトされる

若者だから流行に聡いというわけではありません。特にビジネス界での流行など、そこでのマウンティングに興味のない若者にとってはどうでもいいことです。むしろ、彼らの多くは、日々消費されて入れ替わっていくビジネス新語を憎んでいます。
そんなことよりも、もっと本質的な原理原則を知りたい、そして実のある議論をしたいのです。だから、新語を弄ぶ上司よりも、逆にそういう空虚な新語をほとんど使わずに、「ああ、それは要はこういうことだよ」と、ふつうに生きていれば理解できる、ふつうの言葉で説明してくれる上司のほうに知性を感じ、リスペクトを感じるのです。

できる人とは、定理や公式を自分で作れる人

以前、私は数学の先生でしたが、できる生徒とは、数少ない公理から、定理や公式を導くことができる人でした。2次方程式の解の公式などは、最初見るとギョッとする異様な式ですが、それを無理やり暗記するのではなく導き出す。それができれば公式は忘れてしまっても大丈夫です。他にも、素材や調味料のことを本質的にわかっている人は、レシピなどなくてもおいしい料理を作れます。料理の公理から定理や公式を導き出せるからです。
ビジネスでも結局これらと同じで、できる人は日々移り変わっていく表面的な概念のセットに詳しいのではなく、原理原則で物事を説明できる人ではないかと思います。上司たるもの、部下に対して、どんなときにも変わらない、普遍的なビジネスの原理原則をふつうの言葉で是非教えてあげてください。新語で弄ぶのではなく。
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
 
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「20代から好かれる上司・嫌われる上司」
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石井あかね=イラスト


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