「自分の扉を大きく開きたいから、僕は旅に出る」呉山賢治
モデルという職業柄、海外での仕事は少なくない。実際に2人が旅にハマったきっかけは、海外へのビジネストリップだった。とはいえ、自主的に計画を立て、まだ見ぬ外の世界に触れることは、仕事上の渡航とは質がまるで異なる。大石さんは孤高のバックパッカーとして、呉山さんは気の置けない仲間と、それぞれの旅を楽しんでいる。大石 僕が今、特にハマっているのは、トレッキングがメインのひとり旅だけど、呉山くんは仲間といろいろ巡ってるよね。
呉山 世界のいろんな所に住んでいる仲間と旅先だけ決めて、現地集合・現地解散って感じの自由な旅が好きで、価値観が合う男同士で行くので気も使わないし、ひとりだと起きないようなハプニング的なことも面白くて。
大石 僕も現地で仲良くなった人と一緒に行動したりはするけど、そういう予期せぬ出会いって確かに楽しいよね。
呉山 行く先々に友達ができたりとか。それも旅の醍醐味だと思います。
大石 ガチガチにスケジュールを決めないで自由に動くっていう僕の旅は、以前にやった世界一周の続きのような感覚で、安いドミトリーに泊まって、現地のご飯を食べて、贅沢はしないんだけど、そういうのが僕には合ってるみたい。
呉山 でも、ドミトリーって結構大変ですよね。人の出入りが多いから、けっこうミラクルな人も泊まりに来る。いびきが大きいくらいならまだいいけど、匂いがキツい人もいたりとか……。まあでも、それはそれで面白いのか(笑)。
大石 逆にそれが楽しみでもあるよね。日本は恵まれているし、インフラも人もみんなちゃんとしてる。でも、海外では決してそれが当たり前じゃない。そういう気づきがあって、あらためて日本の環境、自分たちの日常を大事に思えるというか。
呉山 確かに、日本は良い意味でも悪い意味でもすべて整い過ぎている。とてもありがたいことだけど、でも同時にそれが自分の視野を狭めているような感覚もあって。自分の扉を大きく開きたいから、僕は旅に出ちゃうんだと思います。
これまで赴いた先は、大石さんが53カ国、呉山さんが約40カ国。文化や風習の垣根を超えて、ボーダレスに旅を楽しむ。その縦横無尽なスタイルは、悪路をものともせず、都会の混み入った道でも小回りの利くSAV、ニューBMW「X1」さながらだ。だからこそ多くの予期せぬ出会いや驚きに直面し、非日常の尊さを噛みしめられる。大石 僕が行ったなかでは、インドがショッキングだった。駅でも街中でも、そこらへんで人がたくさん寝ていて。シンプルに凄いなって。今この瞬間も、インドではたくさんの人が路上で寝ている。僕は日本の恵まれた環境にいるけど、そういう人と同じ時間を過ごしているんだって実感できたのは大きかった。
呉山 僕は南アフリカでの出来事が印象に残っています。物乞いの子供たちが路上で音楽に合わせて踊っていたんですが、きっと生活は辛いはずなのに、踊っているときの表情が本当に楽しそうで。でもチップを渡すと、どこからか親が走ってきてそのお金をすぐ取って行ってしまう。そういうリアルって、体感しないとわからなかったと思います。
大石 話で聞くのと、実際に見るのとではきっと全然違うよね。
呉山 今って、インターネットやSNSでいくらでも情報が拾える。でも、それって実際には嘘か本当かわからない。自分の目で見て、指で触れたものとの差って、とてつもなく大きいと思うんです。
大石 だから現地の人と触れ合うことで相手のことを知って、僕のことも話す。そうやって、普段は繋がりのない人と繋がっていけるのが、旅の良さかもしれない。
呉山 そうですね。初めて会った生まれも育ちも違う人たちと、同じ話題で笑い合えたり。結果、日本でも人との出会いを大切にするようになりました。自分がオープンになれば、周りも結構応じてくれる。それも旅が教えてくれたことのひとつです。
大石 あと、僕は物を大切にするようになったね。向こうだと、例えば壊れた100円ライターでも直して使うし。旅するうちに意識が変わりました。
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