目標は「箱根駅伝」!
酒井さんが陸上を始めたのは意外にも高校生からだった。
「私の中学には当時陸上部はありませんでした。駅伝大会が近づいた頃に選手としてかり出され、好成績を残してから自信がついて気持ちが陸上に向いていきました」。
進学先は野球で甲子園、ハンドボールや自転車競技などで何度もインターハイに出場する私立のスポーツ強豪校。学内で特別進学クラスに籍を置いていたので、部活動を行うクラスメートはおらず、練習はほかの部員から遅れて参加し、ひとりで練習していたという。それでも高校2年時には念願叶って、全国高校駅伝大会に出場することができた。
「そのときはこれが全国大会かと、レベルの高さに愕然としましたね。そもそもの目標設定もそこへ向かう道筋も、何もかも自分は甘かったと思い知らされましたね。今思えば、ビジョンがない状態でした」。
全国レベルの厳しさを痛感するなかで、酒井さんは自然とさらなる活躍の場を求めるようになる。それが現在の仕事の主軸でもある、大学駅伝だ。
全国高校駅伝の出場経験もあり、東洋大学からスカウトを受けた酒井さん。当然ながら正月の風物詩ともいえる箱根駅伝の存在は知っていたが、いざ自分が走れるかもしれないと考えると、大学生活に対する希望と、自分の力が果たして通用するのかという不安が入り混じった。
「テレビで見ていたものに自分が出るかもしれない。そんな想像をしたときは、“緊張している自分”というものを感じました。でも『大学では箱根駅伝を必ず走る』、という自分のなかの目標設定がハッキリしていたので、高校よリもレベルの高い陸上競技の練習も、初めての寮生活も、教職課程の履修も迷いなく邁進できましたね」。
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